ブリュワーズ新人右腕ペラルタ、“並みの球速”で驚異の奪三振率 打者の錯覚生んだものとは
2018/07/02
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サイ・ヤング賞右腕シャーザー、Rソックス世界一2013年の上原も上回る
ナショナル・リーグ中地区のトップを走るミルウォーキー・ブリュワーズの新人投手フレディ・ペラルタが驚異的な活躍を見せている。
7月1日(日本時間2日)、敵地シンシナッティ・レッズ戦に先発したペラルタは、初回立ち上がりに3点を奪われたものの、それ以降は立ち直り後続点を与えず、5回3失点5奪三振とまずまずの投球内容で降板した。ブリュワーズは2-8敗れ、ペラルタは今季初黒星を喫している。
ペラルタはドミニカ共和国出身の22歳。今シーズン開始前は若手有望株ランキング『MLB Pipeline』でブリュワーズの10位、メジャー全体では100人の中に入っておらず、全く注目される選手ではなかった。
ところが5月13日(同14日)にメジャー初昇格を果たして以来、1度はマイナーに降格するものの、6月19日(同20日)に再昇格して以降は先発ローテーションに定着。そしてこの日が5試合目の先発登板だった。
ペラルタのここまでの成績は3勝1敗、防御率2.28。特筆すべきは奪三振の多さである。投球イニング27回2/3のペラルタがここまで奪った三振は40個。今シーズンも半分を終えたことを考えると、規定投球回数(チーム試合数x1イニング)の条件を満たすことは難しいが、奪三振率(1試合完投したと仮定した場合の平均奪三振数)の数値は現在メジャー全体のトップを走るマックス・シャーザー投手(ワシントン・ナショナルズ)さえも上回っているのだ。
【奪三振率】
シャーザー:12.95
ペラルタ :13:01
ペラルタは身長約180センチ、体重約79キロ。全投球の80%以上をフォーシーム系ストレートが占めるが、その平均球速は約147キロに過ぎない。ちなみにメジャーリーグ投手の同球種の平均球速は約150キロである。
ペラルタが持つ140キロ台の球速と奪三振率の高さは、現読売ジャイアンツの上原浩治投手を思い起こさせる。上原も平均140キロ台のストレートとフォークボールのわずか2種類の球種ながら、メジャーリーグ屈指のクローザーとして君臨。ボストン・レッドソックスに所属していた2013年シーズンには、絶対的クローザーとしてワールドシリーズ制覇の立役者になっている。その上原のキャリアハイとなった2013年の奪三振率でさえ12.23。これを見ると、先発投手のシャーザーとペラルタが挙げている数字の凄さが分かる。
MLB公式サイト『MLB.com』のマイク・ペトリレロ記者が7月1日(同2日)に発信した記事によると、ペラルタの驚異的な奪三振率の高さの理由はボール回転数の高さとリリースポイントの遠さから生じるバッターの錯覚にある。
今季ここまで50イニング以上を投げた190人の先発投手と比較すると、ペラルタのフォーシームの平均球速約147キロは130位、ところが平均ボール回転数は14位だとペトリレロ氏は指摘している。
さらにペトリレロ氏はペラルタのリリースポイントが7フィート(約210センチ)以上で、メジャーの平均が約6フィート(約180センチ)であることを考慮すると、ペラルタが投げるフォーシームは他のピッチャーより短い距離でホームベースに到達し、バッターの体感速度はかなりの高さになるだろうと推測している。
ペラルタの身長は約180センチ。ペトリレロ氏によると、今季100球以上のフォーシームを投げたピッチャーは347人おり、その平均身長は約190.5センチで、ペラルタより身長が低い投手は11人しかいない(サンディエゴ・パドレスの牧田和久投手もその1人)。それにもかかわらず、ペラルタがメジャー屈指のリリースポイントの遠さを保っていることは注目に値する。
さらに、ペラルタは同じフォーシーム系ストレートでも2種類の握り方を駆使して、通常のフォーシームとカットボールのようなストレートを意識して投げ分けているという。このことから、微妙なボールの軌道の違いもバッターを惑わす一因として挙げられるかもしれない。
好成績の理由が何処にあるにせよ、シーズン前の予想をはるかに超えたペラルタの活躍は好調ブリュワーズを支える先発ローテーションの大きな柱になっていることは間違いない。