投球内容を数字で比較 3戦目、田中将大が好投できた理由【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、4月18日のレイズ戦で7回無失点の好投で2勝目を挙げた田中将大についてだ。
2015/04/22
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数字から見る、田中の投球内容の変化
昨年は、最大で6人もの日本人投手が先発のマウンドに立ち、次々と素晴らしい投球を披露した。今年は2人。しかもヤンキースの田中将大、マリナーズの岩隈久志ともに不安定な投球が続いた。
4月18日のレイズ戦、田中将大は7回を2被安打無失点と好投し、ファンを安堵させた。
田中は昨年7月に右ひじの違和感を訴えて戦線離脱。右肘靭帯の部分断裂と診断された。トミー・ジョン手術に踏み切るかと思われたが、PRP療法という保存療法を選択。今年、昨年のようなパフォーマンスが可能かどうか注目されていた。
キャンプで田中は「球速がやや落ちるツーシームを主体にするスタイルへ変える」と話していた。肘に負担のかからない投球スタイルに変更したのだ。
しかし開幕戦は、4回被安打5、被本塁打1、自責点4、2戦は5回被安打4、被本塁打1、自責点3と芳しいものではなかった。
そしてようやく3戦目で好投を見せた。
3戦目の投球と、今季過去2戦の投球、そして昨年の投球は何がどう違っていたのだろうか。数字で見てみよう。
まずは制球力と球のキレに関わる数字だ。今年3戦と、昨年の成績を月ごとにまとめたものだ。
目につくのはストライク率(%)の変化だ。この数字は先発投手の場合63%程度が標準と言われる。昨年の岩隈久志はこの数値が70%を超えており、田中も68%前後と非常に高かった。
ストライクが先行するのは、投球の基本だ。田中はカウントを有利にすることで、打者に優位に立っていた。
今年の開幕からの2試合はこの数値が61%台と標準以下。制球難に陥っていたのだ。4月18日の投球ではこの数字が68%へ急回復した。まず制球力を取り戻したことが、大きかった。
さらに空振り率にも注目してもらいたい。球のキレや球威の目安にもなる。10%を超えれば優秀だ。田中は昨年4月には16%で驚異的な数字をマークした。これは主に打者がスプリットに手を出して空振りしていたことを意味する。この数値が徐々に落ちてきているのは、打者が田中の変化球に手を出さなくなっていることも表している。
今年はこの数値が全体的に低い。球のキレが悪い、あるいは明らかにボールとわかる球が多いなどの原因が考えられる。投球精度が低かったのだ。
1回当たりの投球数(標準は15球強)、1人当たりの投球数(標準は4.5球)は制球が悪く、打者が手を出してくれないと増える傾向にある。
昨年の田中はこの数値も優秀だったが、今年に入っての2戦は悪かった。4月18日の試合は大幅に改善されている。