躍進ブリュワーズ「噛ませ犬」返上へ 小規模マーケットも地元熱狂…最貧チームの逆襲に注目
2018/10/14
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MLB機構は多くの収入望めるドジャース推し?
ナショナル・リーグ優勝決定シリーズ第2戦が13日(日本時間14日)に行われ、ミルウォーキー・ブリュワーズがロサンゼルス・ドジャーズに3-4で敗れ、シリーズ1勝1敗とした。
リーグ優勝決定シリーズ第1、2戦が行われたブリュワーズの本拠地ミラー・パークには両日とも超満員の観客が詰めかけた。ブリュワーズの球団公式サイトによると、ミラー・パークの最大収容人数は4万1900人。ところが第1戦の入場者数はそれを上回る4万3615人、第2戦は4万3905人だった。球場外でもミルウォーキー市があるウィスコンシン州内各地での熱狂ぶりが各メディアで報じられている。
同シリーズ第1戦の勝利でブリュワーズがレギュラーシーズン終盤から続けていた連勝が「12」に達すると、ウィスコンシン州のチェーン・レストラン「ジョージ・ウェブ」はかねてから予告していたハンバーガーの無料配布を翌週実行すると発表。同レストランは1987年にもブリュワーズの12連勝を祝って同じ催しを行っており、その際には16万8194個のハンバーガーが無料で配られた。31年後の今年はどれだけの個数になるかはまだ不明だ。
2018年のMLBポストシーズンは、リーグ優勝決定シリーズに進出したナショナル・リーグのブリュワーズとドジャーズ、アメリカン・リーグのヒューストン・アストロズとボストン・レッドソックス、計4チームの戦いに絞られているが、この4チームの中で昨季ポストシーズンに出場していないのはブリュワーズだけ。それだけではなく、色々な意味でブリュワーズは他の3チームと比べて異質な存在である。
まず球団の市場規模が挙げられる。ロサンゼルス、ヒューストン、ボストンと他の3チームが大都市を本拠地にしているのに対し、ミルウォーキーの都市としての規模は際立って小さい。米国国勢調査の発表した数字を使って、4チームの本拠地都市の人口を比較すると以下のようになる。
ロサンゼルス 約400万人 (全米2位)
ヒューストン 約230万人 (全米4位)
ボストン 約69万人 (全米22位)
ミルウォーキー 約59万人 (全米31位)
ボストンとはあまり差がないように映るが、レッドソックスはレッドソックス・ネーションと呼ばれる米国北東部全域に渡るメジャー屈指の広いファン層で知られている。
人口が少なければテレビ視聴者も当然少なくなる。放映権収入を目論むMLB機構からすると、ドジャーズがブリュワーズに勝ってくれた方が、ワールドシリーズでの収入が大きくなる。前マイアミ・マーリンズ球団社長のデビッド・サムソン氏がラジオのインタビューで「MLBはあらゆる手段を使ってドジャーズを勝たせようとするだろう」と発言して物議を醸した。不用意な発言ではあるが、それが経営側の本音だろう。
市場規模と密接な関係にある各チームの資金力の違いも見逃せない。各チームの年俸総額を比較すると、ブリュワーズは他3チームから大きく引き離される。スポーツ関連調査会社大手『Spotrac』によると、各チームの2018年度年俸総額は以下のようになる。
レッドソックス 約251億円(MLB1位)
ドジャーズ 約222億円(MLB3位)
アストロズ 約180億円(MLB9位)
ブリュワーズ 約120億円(MLB22位)
野球に限った話ではないが、プロスポーツの世界では資金力のあるチームが優れた選手を多額の報酬で獲得し、戦力面でますます優位になる。従って年俸総額の差はそのままチーム戦力の評価につながる。シーズン前にブリュワーズのポストシーズン進出を予想する声は殆どなかった。
野球専門サイト『FANGRAPHS』の2018シーズン開幕直前予想では、各チームがリーグチャンピオンシップに進出する可能性をアストロズ97.4%、ドジャーズ90.0%、レッドソックス64.4%、ブリュワーズ11.7%としていた。
英語に「Underdog」という表現がある。勝負事で負ける可能性が強いとみられる集団や個人を指す言葉で、「噛ませ犬」と訳されることもある。ナショナル・リーグの優勝決定シリーズがドジャーズ対ブリュワーズに決まって以来、多くのメディアがブリュワーズに対してこの表現を使うことが多くなった。
格下と思われていた弱者が絶対的に優勢と見られていた強者を打ち倒す。そんな映画のような番狂わせのストーリーを望む声は日に日に強くなってきている。次戦からドジャーズの本拠地ロサンゼルスへと舞台を移すナショナル・リーグ優勝決定シリーズから目が離せない。