”8回の男”田澤純一、日本球界入り拒否、手術……「長く険しい道が適所に導く」
今やレッドソックスの8回の男として不動の立ち位置を築いた田澤純一。そこに至るまでは、数々の困難や障壁を乗り越えてきた。
2015/04/26
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手術、リリーフへの転向が大きな転機に
もう1つの転機として紹介されているのが2010年に受けたトミー・ジョン手術だ。前年日本人先発投手としては最年少となる23歳66日での勝利をあげるなど順調なデビューを飾ったが、翌年はスプリング・トレーニングから不調。精密検査の結果、右ひじ靭帯損傷が見つかり4月6日、トミー・ジョン手術を受けることとなった。
2011年、手術から無事復帰したが、登板では結果が出ない。1A+での初め2先発では7回1/3を投げ12失点、投球内容に加えて、80mph中盤まで落ちてしまった球速も問題視されていた。その後の4試合では結果を出し2Aに昇格したものの、昇格後最初の先発で1回6失点の大炎上。オーナー夫婦が見守る中、痛恨の失態となった。
この登板が後の田澤の運命を大きく変えることになる。
レッドソックスの首脳陣は田澤の将来的な適正はブルペンにあると考えながら、スターターとしての可能性も模索するため、これまでは先発投手として調整させてきた。しかしこの試合後、田澤によりアグレッシブなアプローチを身に着けてもらいたいと、調整方法をリリーフピッチャーのものに変えたのである。レッドソックスで育成担当を務めていたハゼン氏はその意図について以下のように述べている。
“Sometimes in that starter role, guys start conditioning themselves mentally to get into the sixth and seventh inning, which is great,” said Hazen. “[But] leaving gas in the tank can sometimes impact a guy’s ability to let it go. But in a bullpen role, where it’s just about going out there and giving it everything you have for three outs, you start to see that velocity climb. I think that’s what we were looking for.
「先発投手の役割では往々にして、選手たちは心の中で6、7回を投げることを目標にし始めてしまう、それは素晴らしいことだ」とハゼンは言う。「しかしタンクにガスを残すことはしばしば彼らに諦めを与えることになってしまう。ブルペンであれば、ほとんどの場合、マウンドに上がって自分の持てる全力を3つのアウトを取ることだけに注ぎ込めばいい、球速も上がってくるだろう。私はそれが我々の探していたものだと思う」
ブルペンへの転向は結果として大当たり。田澤は2Aでの残り7試合を防御率2.54と好投。手術で落ちていた球速も93,4マイル(150km/h~152km/h)を記録するまでに回復した。2Aから昇格後3Aのポーターケットでもリリーフとして好投を続けると、シーズン終盤にはメジャー復帰。9月14日のブルージェイズ戦を皮切りに3試合に登板し、復活をアピールした。
歴代のボストンのリリーフ投手と匹敵する成績
その後の活躍は言うまでもない。昨年はワールドシリーズに出場した13年と並ぶ71試合に登板。上原への橋渡し、ボストンの8回の男としてその役割は不動のものになっている。
歴代のレッドソックスリリーフ陣の中で田澤がどのレベルにいるのかも、特集内ではデータを用いて検証している。ERA+(守備と球場を考慮し、100を平均値としたときの防御率傑出度)を用いたランキングでは田澤は名リリーバー、ポール・クオントリルとスパーキー・ライルの間となる歴代10位(1位はジョナサン・パペルボン、3位は岡島)。またERA+で130以上を記録したシーズン数では4位タイの3シーズン、このままの調子でいけば、あと2年で歴代最多5シーズンを記録しているパペルボンとボブ・スタンリーに並ぶことになる。記事ではこうした数字をあげ田澤を「レッドソックスのリリーフ投手の中で最も効果的な投手の1人」と称賛している。
“We talk about it all the time ? that seventh/eighth inning is the most crucial part of a lot of games. He sits right in that spot and he has sat right in that spot for the last three years, comes out, and throws strikes,” said Hazen. “He’s a very valuable piece.”
「我々はいつも、7、8回は多くのゲームで最も重要なポイントであると話している。彼はそのポジションを全うしているし、ストライクを投げ、アウトを取り、そのポジションを3年間務め上げてきた」とハゼンは語る。「彼はとても価値のあるピースなんだ」
出典:A long and difficult road led Junichi Tazawa to the right place by Alex Speier in Boston Globe on Apr.24 2015