大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



菊池雄星の代理人スコット・ボラス氏とは? MLBで最も影響力のある辣腕家、大手事務所と一線を画す異質な存在

2018/11/23

text By

photo

Getty Images



ボラス氏が異質ともいえる4つのポイント

 まず、ボラス・コーポレーションが野球専門であることだ。他の大手代理人事務所は、フットボール、バスケットボール、サッカー、ゴルフ、テニスなど他のメジャースポーツも手掛けており、野球はその1部門に過ぎない。ボラス氏自身は元マイナーリーガーであり、氏の息子は現役のマイナーリーガーである。氏にとって野球は必ずしもビジネスの対象だけと言うわけではなさそうだ。氏は自らの名前を冠した高校野球のトーナメントもカリフォルニア州とアリゾナ州で主催している。
 
 次にボラス・コーポレーションは完全に個人事務所であること。他の大手代理人事務所には全て複数の有名代理人が在籍している。だが、ボラス・コーポレーションにはボラス氏をサポートする多数のスタッフや専門家はいても、彼以外に名の通った代理人はいない。
 
 そして、ボラス・コーポレーションが持つ秘密主義というのも他と一線を画す点に挙げられる。同事務所の本社は南カリフォルニアでも屈指の富裕層が集まるニューポート・ビーチ市の中心地にある。ロサンゼルス・エンゼルスの本拠地アナハイム市からは約30キロの近距離だ。3階建てのさほど大きくはない社屋なのだが、外からは全く内部の様子がわからない。全ての窓はブラインドが下ろされ、入り口のドアには窓どころかドアノブすらない。壁に小さなインターホーン画面があるのみだ。
 
 同事務所のウェブサイトは1ページのみ。同社のロゴとメールアドレスが表示されているだけだ。他の大手代理人事務所のウェブサイトがそれぞれのクライアントやビジネスの情報を宣伝していることと比較すると、ボラス・コーポレーションの異質さは際立っている。
 
 最後にボラス・コーポレーションが設立したトレーニング施設だ。2018年シーズン前、多くのFA選手の所属先が決まらず、大リーグ選手会が独自のキャンプを開催したことがあった。その際、ボラス氏は自らが抱える選手をこのキャンプに参加させず、代わりに自身が運営するトレーニング施設で調整させると語った。
 
 そのトレーニング施設のことであるかは不明だが、同事務所本社から約20キロ南のアリソ・ビエホ市に位置するアメリカ創価大のキャンパス内にボラス氏が運営するトレーニング施設がある。アメリカ創価大は閑静な住宅地にある小さなキャンパスで、学生数はわずかに約400人。同大学には野球チームすらない。ウェイト・トレーニング施設とそれに隣接した競泳プールと陸上競技場があるのみだ。
 
 ボラス氏がこの場所を選択した意図は不明だが、実際にここでボラス氏と契約したメジャーリーガーがトレーニングをしていることに間違いはなさそうだ。筆者が所属する米国ストレングス&コンディショニング協会のウェブサイトにこの施設のトレーナーを募集する求人広告が掲載されたことがある。求人の要件として、メジャーリーグ組織で働いた経験があること、ストレングス&コンディショニング・スペシャリストの資格を持つこと、そしてスペイン語と英語のバイリンガルであることが挙げられていた。
 
 このように謎が多い人物ではあるが、ボラス氏が野球界きっての辣腕代理人であることは間違いない。代理人契約を結んだ菊池の選択は吉と出るか凶と出るか、今後の推移に注目だ。
 
 
角谷剛

1 2


error: Content is protected !!