【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】田中将大投手は、投球スタイルの転換を~ヒジの故障から考える日本野球界の課題
ベースボールチャンネルでは、月2回、読売ジャイアンツなどでプレーし、その後ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして当時、黒田博樹投手や齋藤隆投手の入団に携わった小島圭市氏の連載をスタートさせます。小島氏は現在、(株)K’sLabを立ち上げ、スポーツ環境の向上から青少年の育成に積極的に関わっています。この連載では、日本の野球界が発展するための視点から、一つのテーマを深く掘り下げ、野球ファンや、野球指導に携わる皆さんに問題提起をしていきたいと考えています。第1回目は「田中将大投手は、投球スタイルの転換を~ヒジの故障から考える日本野球界の課題」です。
2014/09/26
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田中将大投手の復帰時期は妥当
靭帯の部分断裂により、離脱していたヤンキースの田中将大投手が復帰登板を果たしました。
ところで、この田中投手の復帰の時期が早いのではないかという声も上がっているようです。
私はそうは思いません。
確かに、田中投手が怪我で離脱した当初、ヤンキースが8月後半の復帰を目指すというプランを立てていた時は厳しいのではないかと感じましたが、それでも、この時期は妥当じゃないかというのが私の意見です。
この時期に先発に復帰させたのは、(首脳陣が)怪我の状態を見たいという意図があったのでしょう。来年の戦力になるかどうかの判断をするためではなく、通常通りのリハビリの時間、時系列でやっていこうという中での登板ではあったと思います。
実際に彼のピッチングを見ましたが、体が軽そうでした。離脱する前の何試合かはヒザが沈んで、体も切れていない状態でしたから、体がリフレッシュされてきたのかなと感じました。
田中将大投手の故障を契機に、最近、トミー・ジョン手術が話題になります。
実は、トミー・ジョン手術は、手術だけではなくて、手術後のリハビリがしっかりとプログラムされています。
(トミー・ジョン手術を受けた)カブスの和田毅投手が「違和感がまったくなく、すごくいい状態だ」とインタビューで答えていました。
私も現役の頃にトミー・ジョン手術を受けているので、この感覚はわかります。
メンタルもフィジカルもリフレッシュでき、そして、体全身をバランスよく鍛えられるから、投げていて、ものすごく気持ちがいいのです。
手術をするまでは、どこかが痛くて、常に制御して投げていたのがリセットされるのです。1年~1年半というリハビリ期間は、非常につらい期間ではありますが、新しく生まれ変わることができます。
和田投手を見ていても、非常にいい方向に向かっているのがわかります。私は、一昨年のオフに、アメリカのある場所で、偶然に和田投手がトレーニングをしているのを見る機会がありました。
「いい復帰の仕方をするんだろうな」、そんな風に感じさせる姿勢で練習に取り組んでいて、非常に感心しました。
今の和田投手の投球フォームは、日本にいたときよりも良くなっています。木で例えば、太い幹に、いろんなものがつき始めている印象です。
カブスが今後、和田投手との契約をどうしていくのかはわかりませんが、来季、二けた勝つ可能性は十分にあると思います。
ローテーションの5番目という非常に厳しい立場ですが、打線やめぐりあわせなどがうまくかみ合えば、今年よりも来年のほうが良くなるように思います。このように、アメリカはリハビリのプログラムがしっかりしているのです。