『投高打低』『先発投手の球数制限』開幕1カ月から見る、2015年のMLBトレンド
メジャーリーグが開幕して1カ月。米大手メディアである『Sports Illustrated』誌では、早くも『2015年のMLBのトレンド』をいくつか挙げている。
2015/05/12
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『投高打低』が色濃く表れた4月
ここ15年で、選手経験のないジェネラルマネージャー(以下GM)が一気に増えてきた。
一昔前のGMと言えば、選手やスカウトを経験してきた、いわゆる『現場上がり』の人間が多かった。しかし今はプロ経験はおろか、野球経験すらない『背広組』がGMに就任する。彼らは名門大学を卒業し、MBA(経営学修士)式マネージメントで武装し、コミュニケーション能力に優れている。要するに経営感覚に優れた人間たちなのだ。
そんな彼らが運営する球団が、抜群の成果を収める時代になってきた。
これが、ここ15年の『球団運営のトレンド』と言えるだろう。
メジャーリーグが開幕し、1カ月が経過した。米大手メディアである『Sports Illustrated』誌の記者、トム・ヴァーダッチが『2015年のMLBのトレンド』をいくつか挙げている。開幕後1カ月でトレンドを探るのは、いささか早計かもしれない。しかし、今シーズンを占う上で、ある種の指標になるのは間違いないだろう。
『Sports Illustrated』誌の中から、興味深いトレンド5個をピックアップしてみた。
1.『投高打低』の傾向が、例年以上に色濃く出ている
下記4種類のデータをまず紹介している。
◆4月のMLB全体のK/BB 2.62
この数値は、過去の4月の中で最高の数値。
※K/BB……奪三振÷与四球。この数値が高ければ、『コントロールがよく、なおかつ三振を奪える投手』
◆4月のMLB全体のWHIP 1.28
この数値は、1972年以来、4月の数値として最も低い。
※WHIP……(被安打+与四球)÷イニング数。1イニングあたり、四球と安打をどのぐらい許したかを表す数値。1.00を下回る投手はサイ・ヤング賞級。
◆4月のMLB全体の出塁率 .315
この数値は、1981年以来、4月の数値として最も低い。
◆4月のMLB全体のOPS .705
この数値は、1992年以来、4月の数値として最も低い。
※OPS……出塁率+長打率。この数値が高ければ、『選球眼が良くてパワーのある打者』。
過去の4月と今年の4月のみを比較したデータではあるが、『投高打低』が証明されている。この傾向がこのまま続くかはわからない。一般的に打者より投手のほうが、仕上がりが早い。夏場に向けて徐々に改善していくとは思われるが……。
2.リリーフ投手の成績が良すぎる
上記の『投高打低』をさらに探ってみると、驚異的な事実に突き当たる。リリーフ投手の成績が抜群に良い点だ。過去6年さかのぼると、4月のリリーフ投手の被打率は平均で.260。しかし今年に至っては、何と.233。そして下記は、4月のリリーフ防御率トップ5のチームである。
ロイヤルズ 1.02
カージナルス 1.59
ヤンキース 1.75
アストロズ 2.18
ドジャース 2.25
ロイヤルズは、クローザーのホランドが故障者入りしていたのにもかかわらず1位。まさに鉄壁のブルペンだ。ヤンキースも若武者ベタンセスと、左腕のミラーが大活躍。ちなみに上記の全チームが、首位を走っている(5月10日現在)
3.先発投手の投球制限が、例年以上に厳しい
先発投手に関しても、面白いデータが出てきた。下記の数字は何の人数か、わかるだろうか?
2006年4月: 14人
2007年4月: 6人
2008年4月: 8人
2009年4月: 6人
2010年4月: 10人
2011年4月: 11人
2012年4月: 8人
2013年4月: 5人
2014年4月: 8人
2015年4月: 1人
1試合で120球以上を投げた、先発投手の人数である。今年の4月は何と1人しかいない。レッズのエース、ジョニー・クエトが4月22日のブリュワーズ戦で125球を投げた試合のみである。ダルビッシュをはじめ、一流と呼ばれる先発投手たちが軒並みひじを痛め、腱移植手術(通称:トミー・ジョン手術)を受ける事例が頻発。この数字は、各チームが過剰なまでに、投手の投球数に神経を尖らせていることを意味している。ちなみに10シーズン前の1996年4月は、何と120人であった。