“イチローは特別の存在”起用法からうかがえる「マーリンズのリスペクト」【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、マイアミ・マーリンズでその存在感を存分に発揮しているイチローについてだ。
2015/05/12
Getty Images
現時点ではイチローが「第3の外野手」
今季からマイアミ・マーリンズに移籍したイチローが元気だ。成績もまずまずだが、それ以上にプレーが溌剌としている。本人も「居心地がいい」と話しているように、チームにもよく溶け込んでいるように思える。
データの面からも、マーリンズが昨年までのヤンキースとは違う起用をしていることが見えてくる。
昨日までのマーリンズの外野手の成績一覧だ。
左翼のイエリッチが軽い椎間板ヘルニアでDL(故障者リスト)入り。この間、イチローが先発出場したため、現時点ではイチローが「第3の外野手」になっている。
昨日は主軸打者のスタントンを休ませてイチローを3番ライトで使った。オスーナも2試合休んだが(そのうち1試合は遅刻!)、そのときもイチローが先発出場した。
結果的にイチローだけが全試合出場。5月9日は1日だけ規定打席に達し、打撃ランキング40位に名前を連ねた。
イチローは毎試合出場して調子を上げていくタイプだ。開幕早々にイエリッチの離脱もあり今のところ、開幕前の多くのメディアが予想した以上に出場機会を与えられている。
出場機会だけではなく、起用法も昨年までとはかなり違う。MLB移籍以後のイチローの打順、先発・途中出場別の出場試合数をまとめてみた。
2012年まで1844試合に出場で、このうち先発出場は1828試合。実に99.1%になる。代打の起用はわずか16試合、代走や守備固めは一度もなかった。1751試合、95%が一番での起用だ。マリナーズ時代のイチローはまさに鉄板のリードオフマンだった。
ヤンキース移籍後は、一番での起用が激減し下位での起用が増えた。代打も34試合、代走や、試合終盤での守備固めも45試合あった。
ヤンキースのジラルディ監督は、イチローをレジェンドではなく「普通の外野手」として、試合状況に応じてさまざまな役割を演じさせた。
スター選手ぞろいのヤンキースは、他球団の大物選手を獲得して、脇役で使うことが多い。イチローもそれを承知で移籍したのだろうが、毎日のように役割が変わり、出番が変わるのは、やりにくいことではあっただろう。
今年も先発出場だけでなく途中出場も多い。しかし代走や守備固めは一度もない。スタメンで使われるか、代打か、その二通りの起用だけだ。
イチローにしてみれば「自らの役割」がはっきりしている状況ともいえるのではないか。