日本人はスピードで苦戦? 枠にはめないChallengeで差が出る、走塁技術【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】
読売ジャイアンツなどでプレーし、その後ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして当時、黒田博樹投手や齋藤隆投手の入団に携わった小島圭市氏の連載。小島氏は現在、スポーツ環境の向上から青少年の育成に積極的に関わっています。この連載では、普段ジュニア育成についての話題が多いですが、今回は「走塁」がテーマです。日米の考え方の違いが、走塁技術に顕著に表れます。
2015/05/14
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スタートの違いは=日米の指導の違い
そのスタートの違いがなぜ起きるかといいますと、これはもう、指導の問題というしかないのです。日本の場合は、ジュニアの頃から「アウトにならない」ような教え方をしています。走塁は次の塁を狙うというのが基本にあります。アメリカの場合だと、常に次の塁を狙っています。「アウトになっても行くんだ」ということを良しとされています。この差だと思います。
先日のサンディエゴ・パドレスとアリゾナ・Dバックスのゲームで、サンディエゴのマイヤーズ選手が次の塁を狙ってタッチアウトになりました。どのような打球だったかといいますと、ライト前のややラインよりに落ちたヒットで、マイヤーズ選手は右翼手がボールを捕ったくらいのときに一塁を蹴ったタイミングでしたが、二塁を狙ったのです。
結果はアウト。しかし、間一髪のタイミングでした。少しでも逸れていたらというようなプレーにもみえました。
このプレーはアメリカの選手だからこそだと思います。日本ではあまり見たことがない走塁です。結果がアウトですから「打球が見えているのに、なぜ、あの選手は走っているんだろうか」「アウトになるに決まっているだろ」。そういう人がほとんどじゃないでしょうか。
しかし、そうではないんです。「Challenge」なのです。相手の右翼手は強肩ですが、それほど素早い動きの選手ではありません。だから、それも頭に入れてマイヤー選手は狙ったのだと思いますが、これは彼らがジュニアの頃からどういう指導を受けてきたかを如実に物語っています。制限されていないからではと思います。
繰り返しになりますが、「アウトにならない指導をする」か「チャレンジすることを良し」とするか。その差です。これは走塁に限ったことではありません。これまでにもお話ししてきましたが、制限させないからこそ、面白いキャラクターの選手が出て来るのです。
日本人は世界的にみても勤勉な人種で、指導されたことは、その善し悪しを差し引いても、言われた通りにやります。従順な性格を持っています。アメリカに行くようになって感じたのは指示をしないのです。出過ぎたときに「これ以上やったらだめだよ」といいますが、それまでは好きなようにやらせるのです。
Dゴードン選手も、ハミルトン選手にしても、常に「グリーンライト」。つまり、青信号ですよと、青信号だから、いつでも走っていいということが認められているのです。メジャーリーグにはそういう選手が何人かいて、ベンチはサインをほとんど出しません。