【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】「ワイルドカードゲーム」の導入は、MLBコミッショナーの狙い通り。過酷な戦いを避けるため、シーズン終盤まで続く熾烈な優勝争い
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。第3回目は、「"ワイルドカードゲーム"の導入前後によるポストシーズンの成績」についてだ。
2014/09/26
ワイルドカード導入で、盛り上がるMLBのポストシーズン
ワイルドカードはペナントレースをより複雑にし、多くのチームにポストシーズン進出の望みを持たせることで、注目度アップを狙う施策の一つだ。
70年代にNFLで導入されたのが始まりで、MLBでは1995年に導入された。
両リーグの3地区の優勝チームに加えて、リーグで最も勝率の高いチームをワイルドカードとし、優勝チームと同様、ポストシーズンに出場権を与えるものだ。
ワイルドカードができたことで、ポストシーズン進出球団は各リーグ4チームとなった。この4チームがトーナメント方式で、地区シリーズ、リーグ優勝決定シリーズを勝ち上がる。
ポストシーズンはボリュームアップし、およそ1カ月にわたってファンが熱狂する日々が続くようになった。
この11年間で、3球団がワイルドカードからチャンピオン!
2001年からのワイルドカードでの進出球団の戦績を見てみよう。
ワイルドカードでポストシーズンに進出したチームの勝率はかなり高かった。
第1回目のコラムでも紹介したように、MLBのポストシーズンはレギュラーシーズン終了から間をあけずに始まる。シーズン終盤に勢いのあるチームが有利だ。
ワイルドカード争いは、ペナントレースよりも、もつれやすいため、これを勝ち抜いたチームは勢いをそのままにポストシーズンに突入することが多かったのだ。
2001年から2011年まで、ワイルドカードから勝ち抜いてワールドチャンピオンになったチームが3球団もある。
この11年間のワイルドカードでの進出チームの勝敗は108勝96敗、.529とかなりの高率だ。2002年は、ワイルドカードのチーム同士でワールドシリーズが行われた。
NPBでも3位のチームがクライマックスシリーズ、日本シリーズを勝ち抜いて日本一になることがあり「下剋上」と言われる。
しかしMLBでは、長いペナントレースを戦い抜いた勝者が短期決戦で2位のチームに負けるのは理不尽だ、という批判があったために、バド・セリグコミッショナーは、2012年からワイルドカードを2枚にし、その2球団で1試合だけの「ワイルドカードゲーム」を戦うこととした。
これは想像以上に過酷な状況を生んだ。