【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】「ワイルドカードゲーム」の導入は、MLBコミッショナーの狙い通り。過酷な戦いを避けるため、シーズン終盤まで続く熾烈な優勝争い
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。第3回目は、「"ワイルドカードゲーム"の導入前後によるポストシーズンの成績」についてだ。
2014/09/26
2012年から始まった「ワイルドカードゲーム」で過酷な状況に
以後のワイルドカードチームの戦績。
「ワイルドカードゲーム」はシーズン終了から中1日で行われる。
たった1試合しか開催されないため、チームはエース級を立てるなど総力で決戦に臨むことになる。ペナントレースとは全く違った異様なプレッシャーの中で戦うことになった。
ここを勝ち抜いたチームはさらに中1~2日で地区シリーズに進むが、この2年で、地区シリーズを勝ち抜いた「ワイルドカードチーム」は2012年のセントルイス・カージナルスだけだ。
2013年のアリーグは、9月29日にペナントレースの全日程を終了し、クリーブランド・インディアンスが92勝70敗でワイルドカードを手にした。
しかし、あと1枚のカードを巡ってタンパベイ・レイズとテキサス・レンジャーズは91勝71敗の相星で並んでしまった。
そこで両チームは翌30日に1デープレイオフを戦い、レイズが5-2でレンジャーズを下した。レイズは10月2日にクリーブランド・インディアンスと戦い、4-0で勝って、ようやく5試合制の地区シリーズに進んだのだ。
しかし1戦必勝のトーナメントのような試合を2試合も戦ったレイズは、くたくたになってしまったのか、ボストン・レッドソックスに1勝3敗で敗退した。
ワイルドカードのチームのペナントレース終盤の勢いは、「ワイルドカードゲーム」によって急ブレーキがかかったように殺がれてしまうこととなった。
ワイルドカードと優勝では、天と地の差
今シーズンは、昨日時点でアリーグはオリオールズ、エンゼルスの優勝が決定。タイガースもポストシーズン進出が決まっているが、ワイルドカードはタイガース、ロイヤルズ、アスレチックス、マリナーズが手にする可能性がある。
ナリーグは、ナショナルズ、ドジャースの優勝が決定、カージナルスもポストシーズン進出が決まっているが、ワイルドカードは、カージナルス、パイレーツ、ジャイアンツが手にする可能性がある。
2011年までなら、ワイルドカードも優勝も、ポストシーズンでの条件は一緒だったから該当チームには”安心ムード”が漂った。しかし、「ワイルドカードゲーム」導入によって、その空気は一変。
ワイルドカードと優勝では、天と地ほども条件が違う。
各チームは優勝するために必死にならざるを得ない。
たった1枚カードを増やすだけで、シーズン終盤がさらに盛り上がった。
バド・セリグコミッショナーの意図は見事に当たったのだ。