野球不毛の地、チェコから初のメジャーリーガー誕生なるか。26歳捕手の挑戦
2019/03/01
Getty Images
中央ヨーロッパのチェコ出身、ボルティモア・オリオールズ傘下でプレーする、マルティン・セルベンカ捕手が同国出身初のメジャーリーガー誕生への階段を上っている。2月26日(日本時間27日)、米公式サイト『MLB.com』がセルベンカのこれまでの球歴を紹介し、その奮闘ぶりを報じている。
日本においてチェコと言えば、古都プラハやサッカーをイメージする人が多いのではないだろうか。セルベンカも「私の国では、子どもたちは大抵サッカーやアイスホッケーをするものだ。でも、私は常に野球だった。みんな私に、「野球ってどうやるんだい」と聞くのが普通であって、私が説明していることにもイメージが湧かないんだよ」と答える。
チェコでは野球、ソフトボール人口が4000人から5000人と非常に少ないが、セルベンカの父フィリップさんがその1人であったことで、3人の子どもたちは幼い頃から野球に親しんだ。サンフランシスコ・ジャイアンツのバリー・ボンズ氏のファンであったというセルベンカは、夜更かしをして『MLB.TV』を見ていたということだ。
大人たちに混じって地元プラハのアマチュアリーグでプレーしていたセルベンカに転機が訪れたのは2009年。プレーぶりが評価されていたセルベンカは、MLBがイタリアで開催したアカデミーに招待されたのだ。そこでクリーブランド・インディアンスのスカウトの目にとまり、セルベンカの高校卒業を待った上で契約をすることとなったのだ。
そして2011年、セルベンカはルーキーリーグに飛び込んだ。「最初の数週間は非常に困難だった。家族や母国から遠く離れたところで1人でいるのは初めてだったからね」と26歳になったセルベンカは当時を振り返る。
だが、現実は厳しく、マイナー生活最初の5年間で、1Aレベルでも打率.189と結果が出せず、2017年、24歳になっていたセルベンカはインディアンスを自由契約となってしまった。それでも、捕手としてのディフェンス力を評価されていたこともあり、オリオールズがセルベンカに手を差し伸べた。
迎えた2018年シーズン、セルベンカは初の2Aの舞台で97試合に出場し15本塁打を放つ活躍を見せた。所属チーム、ボウイ・ベイソックスのゲリー・ケンダール監督は「彼にとっては長い道のりだが、非常に良くなっているよ」とその成長を認める。
そして今春、セルベンカはオリオールズのキャンプに招待選手として参加している。開幕メジャーに残るのは厳しいと見られているが、幸運が重なれば夢のメジャーの舞台に立てるとも評価されるところまで来た。
チェコ出身のメジャーリーガーと言えば、1952年にデトロイト・タイガースでカール・リンハートという投手が2試合に登板した記録が残っているという。しかし、当時はまだチェコがチェコスロバキアだった時代であり、リンハート氏は現在のスロバキア出身ということで、チェコ人という意味において、セルベンカは同国初のメジャーリーガーになれるチャンスを手にしているのだ。
1992年生まれのセルベンカは今年27歳。残酷だが彼に残された時間はそう多くはなさそうだ。だが、昨年MLBワーストとなる115敗を喫したオリオールズのチーム事情や、彼のパフォーマンス次第ではメジャー昇格のチャンスはありそうだ。野球不毛の地からのMLB挑戦という物語は、果たしてハッピーエンドの結末を迎えることができるのか。