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田澤純一は、「勝利の方程式」を担う絶対的なセットアッパー【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、レッドソックスの主力セットアパーとして登板し続けている田澤純一ついてだ。

2015/05/19

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トミー・ジョン手術から完全復活した唯一の日本人MLB選手

 田澤純一は、日本人MLB選手としては例外的な存在だ。多くの日本人選手とは違うキャリア、そして違うパフォーマンスを見せている。

 まず田澤は、NPBを経ずにMLBに行った。
 新日本石油ENEOSでプレーしていた田澤は、2008年ドラフトの目玉の一人と目されたが、MLBへの挑戦を表明し12球団に指名をしないよう申し入れた。最終的に田澤の「職業選択の自由」を尊重して、各球団は指名を見送った(大谷翔平が2012年に同様の宣言をしたが、このときは日本ハムが強行指名し、大谷を説得している)。
 NPBを経ずにアメリカに行き、MLBまで昇格した選手にはマック鈴木、多田野数人らがいる。

 そして田澤は、現時点ではトミー・ジョン手術の後、完全復活した唯一の日本人MLB投手だ。2009年に先発投手としてMLBデビューをしたが、翌2010年4月にトミー・ジョン手術を受けて1年半をリハビリに費やした。復帰後は救援投手として大活躍をしている。

 キャリアSTATSを見てみる。WHIPは1回あたりの走者(被安打、与四死球)数、GO/AOはゴロアウト÷フライ(ライナー含む)アウト。

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 2011年9月にMLBに再昇格後、2012年からレッドソックスの救援投手として活躍し、2013年からは登板試合数、ホールド数ともにチーム1位。主軸のセットアッパーになっている。

 キャリアSTATSから見えてくるのは、手術前と比べて制球力が飛躍的に上がっていることだ。奪三振数は急増し、与四球数が減っている。被打率も大幅に改善されている。
 また速球の球速も、手術前は94マイル(151km/h)程度だったが、手術後はMAX97マイル(156km/h)を記録。日本人投手としてはダルビッシュ有と肩を並べる最速投手だ。

 田澤は速球を主体として打者から三振を奪うパワーピッチャーだ。GO/AOは1点以下。つまり岩隈久志のように低めを衝いてゴロを打たせるのではなく、フライでアウトを稼ぐ投手だ。豪快ではあるが被本塁打のリスクは増える。2009年のデビュー戦では、ヤンキースのアレックス・ロドリゲスからサヨナラ本塁打を打たれているが、そういうリスクを小さくするために高い投球精度が必要になる。

 2013年にセットアッパーになった以後、防御率、被打率、WHIPなどの数字を向上させている。投球精度が高まったのだ。
 背景には、ある先輩投手の加入が大きいのではないかと思われる。

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