米高校野球では前腕の骨がない選手もプレー、視覚障害者野球はイタリアが第一人者。日本と世界、障害者野球の現在地とは
両腕の橈骨(とうこつ)を持たずに生まれた16歳の少年がアメリカ合衆国の高校野球でプレーしていることが話題となっている。公式サイト『MLB.com』は1日(日本時間2日)、イリノイ州の高校でプレーするマイショーン・ドージャー君を紹介する記事を発表した。世界中で親しまれる野球だが、全ての子供たちが野球をプレーできる環境作りはまだまだ発展途上のようだ。
2019/05/06
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仲間とともに打撃など練習を楽しむ姿
ドージャー君は血小板減少橈骨欠損(TAR)症候群を抱えて生まれた。生まれつき、両腕の前腕部分の骨である橈骨が欠損しており、いわゆる「健常者の」子供たちと野球を楽しむことは容易ではないように思える。しかし、『MLB.com』の紹介した動画のドージャー君は二塁守備につき、チームメイトとともに打撃練習や走力アップのドリルも行っている。
ドージャー君が所属するのは「Junior Versty(JV)」と呼ばれる、各校のトップレベルよりは低いレベルながら、競技としての野球をプレーするディビジョンのチーム。生まれ持った身体的特徴から苦労する場面も多い中、チームメイトやコーチとも談笑しつつ野球を練習し、楽しんでいる。
同サイトでは過去にも、右腕を失いながらも捕手としてプレーし続けたルーク・テリー君のプレーする様子を紹介。また、右手の手首から先がないというハンディキャップを抱えながら、MLBで1991年に18勝をマークするなど、10年間で通算87勝を挙げたジム・アボット氏などについても特集している。
しかしながら、ドージャー君やテリー君のようなケースは決して一般的なではない。全ての子供たちが野球をプレーするための環境整備は世界的に見ても発展しておらず、一般的に広く知られる段階までは達していないのが現状だろう。次ページでは、この状況を打破すべく動いている野球界の取り組みをいくつか紹介する。