菊池雄星、スライダーを自在に操り2勝目 今季最多106球、あわやノーヒッターの期待も【雄星リポート第9戦】
シアトル・マリナーズの菊池雄星投手が8日(日本時間9日)のニューヨーク・ヤンキース戦に先発。7回2/3を投げ、3安打1失点に抑える好投を見せて、今季2勝目を挙げた。2試合連続で7回以上を1失点、防御率は3.54まで上昇した。
2019/05/09
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初回の先頭打者こそ四球で出したものの、菊池はこのイニングを4人で切り抜けると勢いに乗った。スライダーを軸としながら、ストレートとカーブを効果的に使って打者を翻弄。5回まで一本のヒットも許すことなく、テンポよく投げた。移籍後、最多となる106球のリズムの良い投球が光った。
この日、注目したかったのはスライダーの「継続」だった。
前回、前々回とスライダーのコツをつかんだ菊池は、それまでとは打って変わったピッチングを見せるようになっていた。スライダーを自在に操ることができるようになったことでピッチングの幅を広げていたからだ。
特に、この日はストレートの精度が悪かった。ボール球こそ少なかったものの、左右に散らばり、指にかかったボールを多く投げられているわけではなかった。こうした場合、以前までの菊池だと、そこからカーブを多投して、緩急差や目線を変えることでかわして投げるしかなかったが、スライダーをものにしたことで、ピッチングをうまくデザインできるようになってきたのだ。
バックドアのスライダーでカウントを取り、ストレートを挟んで、今度はインコースのスライダーで打ち取る。また、あるいは、カーブでカウントを稼いで、ストレートを挟んで、スライダーを勝負球に使う。また、あるいは、追い込んでからカーブを外から真ん中に投げるのだ。
これらは、スライダーを自在に操れているからこそ、できるピッチングで、この2戦の手応えを確実にものにしている印象だ。4回裏、菊池は3番のフレージャーを迎えた場面で、何度も首を振ってスライダーを投げ続けたが、それほど、この日のスライダーに自信があったのだろう。さらには、チェンジアップも要所で加えて、4球種でのバランスのいいピッチングは見事というほかなかった。
6回裏に、9番・トークマンに左翼線に落とされたのは痛かったが、あわやの期待を抱かせてくれるほどのピッチングは今後への手応えとなったに違いない。
8回2死から右翼前安打を浴びたところでマウンドを降りたが、メジャー最多の106球を投げた。完封・完投はそう遠くない時期にやってくるだろう。故障者が続出中だったとはいえ、名門・ヤンキースから奪った勝利は次へのステップになるはずだ。
氏原英明