大谷翔平は「甲腸連動」を使えてはいるが……
通常のスポーツ選手たち、ほとんどすべてのスポーツ選手の股関節は、ドタドタ、ドサドサとガッチリと固まって動きづらい状態になってしまっているのです。一方で、クリスティアーノ・ロナウドなど、ほんの一握りの世界のトップアスリートが絶好調のときだけは、まさにカミソリのような切れ味のいい股関節に仕上がっています。日本のアスリート史上屈指の股関節使いだったイチロー、さらにはMLBでも二刀流を実践する大谷翔平についての部分を、高岡英夫最新刊『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる!』から一部抜粋で公開!(後編)
2019/06/11
Getty Images
股関節と肩甲骨の両側からアプローチを
さてここからひとつ、皆さんが驚くような話をしておきましょう。大谷は肩甲骨側からのアプローチに優れているため、そのおかげで「甲腸連動」を起こし、メジャーリーグの中でもかなり走力のある選手として注目されたわけですが、股関節側からのアプローチはまだまだ不足しているのです。
このような話をすると、「えっ、肩甲骨側から十分アプローチできていれば、甲腸同調性があるから、実際にバッティングでも走るにしても、甲腸連動によって腸骨もそれなりに使えていて、練習をしたり試合に出たりするたびに、甲腸連動の繰り返しで、腸骨の開発も進むのでは?」と疑問に思うかもしれません。
それは確かに、その通りです。
しかし、スポーツのトップアスリートの世界では、あらゆる可能性を開発しないと、本当のトップにはなれません。つまり、開発の不足している部分があるうちは、トップオブトップには届かないのです。
メジャーリーグでは中堅クラスの球団でも、チームの中にトップ選手が1~3人はいるでしょう。それが優勝するようなチームとなると、5~6人は揃っています。ということは、メジャーリーグ全体で少なくとも数十人のトップ選手がいるわけです。その数十人の枠の中なら、甲腸連動で肩甲骨側から開発し、下半身もよくなっていれば、トップ選手として十分通用します。
しかし大谷には、開発できていない大きな方向性が残っています。それは股関節自体を開発し、股関節から全身を変えていくというアプローチです。
それがなくてもメジャーリーグのトップクラスの仲間入りはできますが、そのトップクラスを抜け出して、真にメジャーナンバーワンのピッチャーやバッターになれるかと言うと、そういう選手は間違いなく肩甲骨と股関節の両側から開発ができている人です。
当然、トップクラスと言っても差があって、松竹梅といろいろな選手がいるわけです。最近の日本のプロ野球で言えば、ピッチャーなら巨人の菅野智之が目立っています。バッターでは、ヤクルトの山田哲人が打率・本塁打・盗塁のトリプルスリーを3度達成して騒がれましたが、彼の場合は少々波があります。
いずれにせよ、トップの中でも抜きんでた選手は、両方からの開発ができている選手で、それ以外の選手の大半は「上」ではあっても「上の下」レベルなのです。