プライドを捨てた元サイヤング賞男 ジャイアンツ青木宣親の同僚リンスカムが再び注目
ナショナルリーグ西地区は大本命のドジャースに、積極補強のパドレス、そして昨年のチャンピオンのジャイアンツと大混戦となっている。開幕スタートダッシュに失敗したジャイアンツも首位ドジャースを猛追。08、09年と2年連続サイヤング賞を獲得した右腕が、現地で再び注目を浴びている。
2015/05/27
Getty Images
新スタイルでローテを支えるリンスカム
『投』のキーマンは、ティム・リンスカムを挙げたい。
08、09年と、2年連続でサイヤング賞を獲得した右腕が、現地で再び注目を浴びている。
かつて長髪をなびかせ、ダイナミックなピッチングフォームで一世風靡したリンスカム。99マイル(159km/h)の速球を高めにガンガン投げ込み、面白いように三振を奪うスタイルは、サンフランシスコで絶大な人気を誇っていた。しかし11年ごろから球速が急激に低下し、それに伴い成績も急降下。エースの座もバムガーナーに奪われ、リンスカムは『終わった投手』として見られていた。
米大手メディア『Sports Illustrated』の記者ジェイ・ジェフィーは、ここ最近のリンスカムについてこう語っている。
He was one of the game’s top pitchers from 2008 to ’11. But from ’12 to ’14, despite being paid like a superstar, at times, he could recapture his glory.
彼は08年から11年まで、トップクラスの投手だった。しかし(球速が衰え始めた)12年から14年も、彼はスーパースターだった頃のように投げた。過去の栄光を取り戻そうとしていたのだ。
ここ数年、過去のイメージを取り戻すため、必死にもがき苦しんでいたリンスカム。だが悲しいかな、かつての豪快なピッチングを取り戻すことはできずにいた。
そんなリンスカムが、今季開幕からまずまずのピッチングを披露している。先発のピービー、ケインが怪我で離脱しており、ハドソンもピリッとしない。苦しい台所事情の中で、リンスカムは地味ながらも堅実にローテーションを支えているのだ。復活の要因は投球内容の変化にあるとジェイ・ジェフィーは分析する。
With the average velocity of his fastball down about five miles per hour from its 2008?09 peak?89.0 mph this year. Via the new mix, he’s generating a career-high 50.4% ground-ball rate and has already produced six double plays, an average of 1.1 per nine innings.
リンスカムの速球は全盛期だった08、09年に比べて5マイル(8km/h)は落ちている。今は89マイルだ。彼は、グラウンドボーラー(ゴロを打たせる投手)へと進化した。今シーズンはゴロ率が50.4%とキャリアハイだ。すでに、6つのダブルプレーを生み出している。9イニングで1.1回の計算だ。
球種別で見てみると、何よりも速球系(フォーシーム)を投げる比率が大きく下がり、代わりに沈む球種(シンカー系)が大幅にアップしている。カーブ、スライダー、スプリットの比率も増し、完全な技巧派投手へとモデルチェンジを試みているのが伺える。
かつて奪三振王を3回獲得した頃の面影はもうない。しかし、プライドを捨てて、成熟された『新生リンスカム』が今季の先発ローテーションを支えている。
ナショナルリーグ西地区は、ドジャースの絶対的優位は変わらない。しかし、青木やリンスカムといった『癖のある』プレイヤーを擁するジャイアンツが、虎視眈々と首位の座を狙っている。
西海岸の決着は、そう簡単には決まらないはずだ。
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