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菊池雄星、7失点KOの背景に「配球の偏重」 大谷翔平に完敗…キレなく散ったこだわりの“球種”【雄星リポート第14戦】

 シアトル・マリナーズの菊池雄星投手が8日(日本時間9日)、敵地エンゼル・スタジアムでのロサンゼルス・エンゼルス戦に先発登板し、4回途中7失点(自責点6)で今季4敗目を喫した。花巻東の3学年後輩にあたる大谷翔平投手にはソロ本塁打を含む2安打を許す悔しい結果となった。

2019/06/09

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後輩との対戦を楽しむ余裕はない

 マリナーズの菊池雄星がエンゼルス戦に8日ぶりに先発し、4回途中7失点でマウンドを降り4敗目を喫した。高校の後輩・大谷との直接対決で注目されたが、大谷の一発を含む3者連続本塁打を浴びるなど3試合連続のノックアウトとなった。
 
 おそらく、この日の菊池には、後輩との対戦を楽しんでいる余裕などなかったに違いない。
 それは8日ぶりの先発となって改良が見られた投球フォームを見ても明らかだった。この日、菊池は二段にしていたフォームから2018年のスタイルに変えて臨んでいた。前回登板で左の股関節に体重が乗り切らないことを課題に挙げていて、その改善を目指してのものだろう。特にスライダーのキレは最重要課題で投球の打開を図ったと見える。
 
 しかし、新フォームでのスライダーは望んだようなものではなかった。例えば、5月19日(同20日)のミネソタ・ツインズ戦や同月8日(同9日)のニューヨーク・ヤンキース戦では速くそして鋭く変化したが、この日のキレは本調子から程遠くエンゼルスの打者たちを戸惑わせるものではなかった。
 
 また、配球面においても、登板を重ねるごとに偏っている。
 
 もともと球種の少ない菊池は左打者には配球が読まれやすい。
 ストレートとスライダーを主としている菊池だが、左打者のインコースにスライダーを投げることはない。つまり、インコースにはストレートしか来ないわけで、目付は外に向けておいて、インコースと思ったらストレートとインプットしておけばいいのだ。メジャーに移ってからカーブを多投するようになったとはいえ、ストレートやスライダーと違って、カーブはボールが浮き上がってピッチトンネルを外れるため、判別がつきやすい。大谷が第3打席に放った本塁打は、まさに浮き上がったカーブで、見極めて捉えられたものだった。
 
 また、右打者の配球もここ数試合は単調だ。
 マイク・トラウト外野手、アルバート・プホルス内野手の打席を見ていると分かりやすいが、ストレートとスライダーはほとんどインコースにしか投げていない。調子が良かった時はスライダーを外から入れるなど、いわゆるバックドアの配球を見せていたが、今はその立体的な配球はほとんど見られない。右打者もインコースに目付をして、ストレートかスライダーかに絞ればいい。スライダーのキレがあれば、それでもなんとかなる時はあるが、今はそうではないのだ。
 
 それでも菊池が初回からスライダーにこだわったのは、それほどこのボールへの執着が強いからだ。当然、それは悪いことではなく、彼のピッチングをデザインしていくためにも必要であるが、現時点で改善するとすれば、まずは配球面から見直していくべきではないか。
 
 スライダーのキレが良くない中で、そこに固執して勝負するのは危険すぎる。ストレートでも痛打されたのも、配球が偏っているからで、メジャーに来てから冴えていたはずの高めのまっすぐは使っていくべきだし、開幕当初に見せ球にしていたチェンジアップも配球の中に組み込まなければいけない。
 
 肝心なのはスライダーであることに変わりはない。
 しかし、それは、もう少しキレが戻ってからでいい。3勝目を挙げた時のツインズ戦は、バックドアを使い、カーブを織り交ぜ、高めのストレートを生かす芸術的な投球だった。スライダーのキレが戻るまでは、配球で打開していくべきだろう。
 
 大谷の完勝、菊池の完敗――。
日本人の多くが注目した高校の先輩・後輩対決はくっきりと明暗が分かれた。
だが、その結果を気にできないほどの現状に、今の菊池はあると言える。



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