米オールスター投票は完全オンライン化 背後にある新たなビジネス戦略【豊浦彰太郎の Ball Game Biz】
MLBの球宴ファン投票は今年からオンラインに一本化された。「紙から電子へ」は時代の趨勢だが、この背景にはMLBとスポンサー企業のビジネス戦略がある。
2015/05/29
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完全オンライン化は自然な流れ
第86回となる今年のMLBオールスターゲームは、7月14日にレッズの本拠地グレートアメリカン・ボールパークで開催される。現在、球宴に関し最も関心を集めているのは、レッズOBで通算安打数メジャー記録保持者のピート・ローズを、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドがこの機を捉え復権させるかどうかということだ。
ローズは野球賭博に関与した廉で、1989年に球界から永久追放されている。
しかし、ローズ問題以外にも今回のオールスターには注目すべき点がある。
それは4月29日にスタートしたファン投票の変革で、今回から遂に投票方法がオンラインに一本化されたのだ。これにより、球場備え付けの用紙での投票は過去のものとなった。
世は正にネット時代。
実際、昨年を例にとるとオールスターの投票総数は約3億票で、その約8割はオンラインでのものだった。一方で1600万枚の投票用紙が未使用のまま廃棄されたという。加えて、野球以外の北米4大スポーツでは、すでにオールスター戦の投票はWEBに統一されている。今回からの措置の実施は時間の問題だったと言えるだろう。
これは「時代の流れ」だけで決断されたものではない。それを必然化させるビジネス戦略が存在しているのだ。
投票用紙の廃止とオンラインへの一本化は、MLBとイシュランス(Esunarance)社の提携契約の産物だ。自動車保険の通信販売(ウェブがメインだ)業者のイシュランス社は、オールスターファン投票の冠スポンサーとなった。彼らとすれば、保険のネット通販会社としての自社PRには、スポンサーシップ獲得と同時の投票のオンライン一本化は有効だ。これに、投票用紙の大量廃棄などの問題を抱えていたMLBサイドの事情が加わり、今回からの投票の完全オンライン化となったと考えるべきだろう。