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米オールスター投票は完全オンライン化 背後にある新たなビジネス戦略【豊浦彰太郎の Ball Game Biz】

MLBの球宴ファン投票は今年からオンラインに一本化された。「紙から電子へ」は時代の趨勢だが、この背景にはMLBとスポンサー企業のビジネス戦略がある。

2015/05/29

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Getty Images



野球ファンにもっと知的で近代的な楽しみを提供

 イシュランスの戦略は単に球宴投票のスポンサーシップ獲得と投票の完全オンライン化による自社PRに留まらないようだ。

 経済紙『フォーブス』によると、今後はMLBとの提携により、MLB.com、MLBネットワーク(MLB保有のMLB中継専門チャンネル)に次ぐ新たなビジネスプラットフォームの設立を狙っているという。また同社は2012年ナリーグMVPのバスター・ポージー捕手(ジャイアンツ)とブランドアンバサダー契約を結ぶことも発表している。ハンサムで知的な雰囲気もあるポージーは、イメージアップにはうってつけだろう。

 ここ数カ月のうちに、イシュランスはその詳細を明らかにするようだ。それは中継、SNS、その他を含んだ360度展開になるという。同社マーケティング担当役員のアラン・ジェルマンは「イシュランスは、近代テクロロジーを駆使して保険業界に革命を起こした。次は、野球ファンにもっと知的で近代的な楽しみを提供することになる。われわれは多くのプラットフォームを駆使し、ファンの日々の野球体験をより魅力的なものとしていく」とその意欲を語る。

 一方、MLBもビジネス部門副社長のノア・ガーデンも「デジタル投票への一本化は、保険のネット通販会社であるイシュランス社にとって、企業イメージのさらなる浸透に最適な手法だ」と語っている。「自動車保険の世界に新しいアプローチを導入した彼らの戦略は、新しいテクノロジーを駆使してファンを開拓していくMLBと通じるものがある」

 オールスター投票の完全オンライン化が発表されたのは3月中旬のこと。その際メディアでは、これを時代の趨勢と許容しつつも、球場での投票行為というオーセンティックなボールパーク体験が消え去ることを惜しむ記事が目に付いた。

 確かに、多くのアメリカ人にとって少年時代に初夏の陽光降り注ぐスタンドで、投票用紙を手に父親とどの選手がより選出に相応しいかを議論したのはかけがえのない思い出だろう。

 そんな歓びが消え去ることだけを嘆く必要はない。
 MLBとイシュランスの発表を信じるなら、これからはそれに変わる新たな野球観戦の楽しみ方が生まれるはずなのだから……。

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