実力に加え、運も味方に セットアッパーの地位を築いた田澤純一
セットアッパーとして安定感抜群のピッチングでチームを支える田澤だが、その活躍には幸運の要素も大きな役割を果たしているという見方がある。レッドソックスへの入団経緯、ピッチングでのデータはともに田澤に運が味方していたことを示している。
2015/05/29
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安定感抜群で、チームに貢献
今季ここまで23試合に登板、防御率1.71と抜群の安定感を誇り、チームを支えている田澤純一。
チームは低迷しているが、これまでの奮投に現在までのチームNo.1投手にあげる現地記者もいるほどだ。
2012年からセットアッパーとして抜群の働きを見せ、田澤の実力を疑う声は少ない。”運も実力のうち”という言葉があるように、厳しい野球の世界では幸運に恵まれることも、成功するうえでは欠かせない条件だろう。
『Baseball Prospectus』のボストン版は「田澤は幸運でいることが得意?」と題した特集を掲載。経歴、データの両面から、実力だけでなく田澤の幸運について分析している。
まず挙げられているのが、レッドソックス入団の経緯だ。
Tazawa asked NPB teams not to draft him, and they complied with that request ? but NPB announced that there was a Millar-esque “gentleman’s agreement” that MLB clubs would not sign Japanese amateurs, and some MLB clubs agreed. The Red Sox again laughed in the face of such unwritten rules,
田澤はNPBのチームにドラフトしないことを求め、各球団はその要求に従った。しかしNPBは、ミラー事件(後述)の時と同様に、MLB球団は日本のアマチュア選手を獲得してはいけないという紳士協定があることを主張し、いくつかのMLB球団はそれに従ったが、レッドソックスは再びそうした書かれざるルールを一笑にふした。
記事中で書かれているミラー事件とは、2003年に中日とレッドソックス、マーリンズ間で起こったケビン・ミラー問題のこと。03年オフ、マーリンズが中日に譲渡するためにウェーバー公示したミラーに対してレッドソックスが獲得表明、結果的に「日本への譲渡目的でウェーバーにした選手をMLB球団は獲得してはならない」という紳士協定を破って横取りする形となり、大問題となった。
ミラー事件、田澤の獲得(ついでに今年物議をかもした、有望株ブライアントの昇格遅らせ)を指揮したのが当時のレッドソックスのGMセオ・エプスタインだ。
もちろんレッドソックス以外の球団に入っても、田澤が活躍していた可能性は十分にあるが、トミー・ジョン手術後、回復が遅れていた田澤に対して、レッドソックス首脳陣が下したリリーフ転向の英断なくしては、現在、MLBでの居場所はなかっただろう。