【小島克典の「通訳はみだし日記」】最後の最後まで、チームの勝利だけを欲した人格者・ジーターの素顔
ベースボールチャンネルは、毎週火曜日に、横浜ベイスターズ、サンフランシスコ・ジャイアンツ、ニューヨーク・メッツの3球団で通訳として活躍した小島克典氏による書き下ろし連載をスタートします。小島氏は10月より「ゆるすぽweb」www.yurusupo.comを立ち上げ、2020年の東京五輪に向けてゆるやかなスポーツ文化の醸成を目指します。この「通訳はみ出し日記」では、日米の球界で培った小島氏の経験をベースに、現地メディアの報道や知られざる業界の慣習を、独自の視点で軽やかに紹介してもらいます。第1回目は、昨日引退したMLBの大スター、デレク・ジーター選手についてです。
2014/09/30
Getty Images
常にチームの勝利を最優先に
「生きし伝説の名選手」(Newsday)、「誉れ高き真のキャプテン!」(mlb.com)、「ユニフォームを脱いだザ・キャプテン」(ウォール・ストリート・ジャーナル)。
引退したヤンキース主将のデレク・ジーターについて、NYの各メディアはこぞって大見出しで紹介し、彼のこれまでのキャリアを讃え、門出を祝福した。
昨日の最終戦では、こんな一幕があったという。ヤンキース・ジラルディ監督は、引退するジーターの餞(はなむけ)として「2番DH」のスタメンで彼を送り出した。
結果に関わらず2打席で交代というシナリオが組まれたその訳は、「あと2本でメジャー記録に並ぶキャリア18度目のシーズン150本安打」という大記録が掛かっていたからだ。
第一打席を凡打したジーターは、生涯最終打席となった第二打席で三塁内野安打を放ち、三塁走者のイチローが得点した。最終打席で安打と打点を記録したジーターには代走が送られ、スタンディングオベーションに包まれながらベンチに退いた。
今季の通算安打は「149」。18度目のシーズン150本安打にわずか1本及ばず、ジーターは長いキャリアに幕を下ろした。
試合後のジーターは、「これまで数字や記録のためにゲームをプレーしたことは一度もない。だから(1本及ばず149安打で最終シーズンを終えることとなったが)、なにを今さら」と、わずか1安打足りずにメジャータイ記録を逃した点について、さらりと一蹴した。
彼が常に欲していたのはチームの勝利だけ。
最後の最後まで彼らしい、凛としたコメントが印象的だった。