他球団は導入に否定的 メッツ6人制ローテを採用でMLBに定着するか
メッツがいよいよ先発6人制を採用する。MLBでは先発を5人で回すのが一般的であり、6人制に対して否定的な意見が多い
2015/06/04
Getty Images
オーナーにとって6人制はマイナス?
メジャーリーグでは我々が考えている以上に、選手を『商品』や『投資の対象』として捉えている。投資した『商品』が期待以上のリターンを生み出さなければ、その投資は失敗とみなされる。リターンを生み出す機会を奪う(先発の回数を減らす)のは、オーナーが最も嫌うことなのかもしれない。
では、当事者である先発投手たちは、先発6人制をどのように考えているのだろうか。セントルイス・カージナルスのベテラン先発投手、ジョン・ラッキーは、No longer in the wind (そのうち、風はおさまる)とコメント。要するに、こんな話題はそのうち消えていくさ、と言いたいのだろう。
カージナルスの指揮官として、3年連続でチームをプレーオフに導いている名将マイク・マシーニー。彼もまた、先発6人制に対して反対の意見を持っている。
If you have a whole bunch of veteran players who are trying to stack up innings it doesn’t make much sense. Guys like John Lackey and Lance Lynn ready to go it’s those goals they set up and put in their mind a long time ago and that’s getting a lot of innings.
もし多くのイニングを投げたがるベテラン投手がチームにいた場合、先発6人制はナンセンスだ。(カージナルスの先発投手である)ジョン・ラッキーやランス・リンは、昔気質の武骨な男たちだ。彼らはとにかく多くのイニングを投げたいのさ。
メジャーで活躍する一流と呼ばれる先発投手たちは、休養日である4日間に、決まりきったルーティンワークが存在する。各々、独自の調整方法で次の登板に備え、肩を作っていく。休養日が1日増えれば、調整方法に大きな修正を加えなければならない。長年コツコツと築き上げてきた独自の『習慣』である。松坂大輔がそうであったように、調整方法の修正というのは投手が最も嫌うものであり、結果的にパフォーマンスが低下する危険性もある。
前カージナルスの投手コーチ、デーブ・ダンカンは、とにかくこのルーティンワークを大切にするように指導してきたと言う。
The challenge is you don’t want to be too erratic with your scheduling.
We spend so much time telling young pitchers they need to find a routine, they need to stick to a routine and then you take it all away. You disrupt their schedule and they wonder, ‘Is this the day I lift? Do I run tomorrow?’
不規則なスケジュールに変更することは、皆が嫌がる。我々はコーチとして、多くの若いピッチャーにルーティンワークを確立するように言い続けてきた。そして彼らはそのルーティンワークを守ってきた。(先発6人制が導入されたら)今度はそれを捨てなければならない。彼らは混乱し、こう言うだろう。「今日は帰っていいの?」「明日は走っていいの?」
ジョン・モゼラックは、2007年にカージナルスのGMに就任して以来、抜群の結果出し続けてきた。今やメジャーを代表するGMと言っても過言ではない。彼が作り上げたメジャー最高級のマイナーシステムで、次から次へと優秀な若手が輩出される。彼は、単純に球数(100球以内)や登板間隔、ローテーションの人数よりも、もっと大切なことがあると断言している。
We focus more on ‘stress innings’ than anything else,
我々は、ストレスイニング(※1)に、何よりも注意を払っている。
(※1)ストレスイニング
投手が明らかに疲労、疲弊しているのにも関わらず、投げているイニング。
max-out innings(マックスアウトイニング)とも言う。
彼らは、先発投手の球数や登板間隔も大切だが、もっと大切なのは、登板中の投手の様子(疲労感、ボールの勢いなど)だと考えている。投手たちをしっかりと見守り、危険を察知し、怪我を未然に防ぐことが重要であると。確かに100人投手が存在したら、100通りの投球フォームがあるように、単純に球数(100球以内)や登板間隔(4日~6日?)を守れば大丈夫、という話ではない。
メッツは今月から、いよいよ先発6人制を導入する。将来のメッツを担う若き3人の先発投手たち、ハービー、デグロム、シンダガード。彼らの肩やヒジを守るために、メッツは導入へ踏み切った。ちなみにコリンズ監督は、この先発6人制をいつまで続けるかは、明言していない。
現在、現地で賛否両論のSix-man Rotation(先発6人制)。ラッキーが語るように、すぐに忘れ去られる出来事になってしまうのか、それとも……。
メッツの先発投手たちに、世界中のファンが注目している。
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