「現状に満足せず冷静に」田中将大の強み 圧巻のピッチングもすぐに「次」へ
現地時間3日、田中将大がマリナーズ戦で41日ぶりにメジャーで先発し、7回3安打1失点9奪三振の圧巻のピッチングで今季3勝目をあげた。
2015/06/06
Getty Images
圧巻のピッチングも本人は冷静
まさに圧巻だった。右手首のけん炎と右前腕部の張りで故障者リスト入りしていたヤンキース・田中将大投手が3日(日本時間4日)のマリナーズ戦で41日ぶりのメジャー先発マウンドに立ち、7回を無四球3安打1失点、9三振を奪う快投で今季3勝目をマーク。フォーシームは今季最速の96マイル(154キロ)を計測し、米国内でも議論の的となっていた球速低下や右ひじの不安説を沈静化させた。
田中の復活劇を日本メディアはもちろん、それまでどちらかというと厳しい論調が目立っていた米メディアも手のひらを返すようにして絶賛のオンパレード。特にニューヨークの地元紙は登板翌日の発行紙面、あるいは登板の数時間後にアップされた速報ネット記事において、まるで「TANAKA DAY」を彷彿とさせるかのように美辞麗句を並べ立てていたのが印象的だった。
いつもは何かとうるさい地元ニューヨークメディアを自身の快投によって黙らせただけでなく、逆に賛辞まで送らせたのだから気分的にはスカッとしても決して不思議はないだろう。うれしさの余り、ついニヤニヤしてしまったとしても何らバチは当たるまい。
しかし、復帰戦登板直後の田中を見る限り、そういった舞い上がるような様子は微塵も感じられなかった。故障明けの復帰戦は確かに「エクセレント(素晴らしい)」だったが、これを継続させなければ意味がない。長いシーズンをトータルで見て「エクセレント」となってこそ、初めて完全復活と胸を張れるのだ――。このように冷静な自己分析をしているからこそ、田中は復帰戦の快投後もどこかつつましい態度を貫いていたのだと思う。
たとえ周りがどんなに大騒ぎしようとも、冷静に自分の置かれた状況を見極められるところは、田中将大というプレーヤーの特筆すべき点だ。それはもちろん現状に甘んじようとはしない、類まれな気持ちの強さと向上心の持ち主であることの証明でもある。
ましてや今回は復帰戦。まだスタート段階であり、ゴールではない。これを次、いやそれ以降も持続させることが、右ひじの不安を消滅させていく道であると自分に言い聞かせているに違いない。
4日の登板後、大勢の日本メディアの前で囲み取材に応じた田中は、最初のコメントの中で、「本当に今日はすごく良かったですけれども、また次どうなるかわからないので。良かったものは良かったところで、また次につなげていきたいなと思います」と力を込めて言い切った。