千葉ロッテ時代が礎に。渡辺俊介の挑戦へ導いた恩師・ボビー・バレンタインとの出会い
千葉ロッテマリーンズの先発の中心選手として活躍した渡辺俊介。球界では稀有なサブマリンは、マリーンズファンのみならず、野球ファンからも愛された。その渡辺が昨年千葉ロッテを退団。メジャーリーグへの挑戦を表明した。その決断の背景には、自身が師と仰ぎ、千葉ロッテを劇的に変えたボビー・バレンタインの存在があった。
2014/10/05
河野大輔@innings,Co.
“楽しむ”姿勢を常に大切に持ち続ける
ボビーがロッテを変えたのは、フィールド内だけではない。ファンサービスなどに積極的に着手。ロッテをパ・リーグ屈指の人気球団にまで育て上げた。
「年間144試合やるのだから、興行だしエンターテインメントじゃないとお客さんも集まらない。当時、ボビーはその辺を選手にもしっかりと説明していた。仮に負担になっても試合前にサインをさせたりした。今でこそ多くのチームがやっているけど、その流れはロッテからだと思う。ボビーが残した”劇薬”の影響は、日本プロ野球のいろいろなところにいまだ残っている」
そういったロッテ時代に培われたファンサービスの精神は、やはり渡辺にも残っている。
実際、先発登板の直前、外野の芝生の上で遠投をおこなっている時だった。一人のファンが声をかけた。渡辺は遠投を一時ストップ、ファンス際まで足を運んでサインを書いた。
「もちろん、こっちでも試合前にピリピリしている選手もいる。でもサインなどのファンサービスは試合までの調整の中の一環になっている。それが当たり前だし負担に思わなくなって来る」
確かにサインなどは大事である。しかし登板直前の投手が、自らの調整を止めてまで行ったことには驚きを隠せなかった。
「僕も日本でしかやっていなかったらわからなかったと思う。以前は登板の3日前ぐらいからすごく集中して、わりとストイックに神経質にやっていくほうだった。『試合に影響が出ることさせるなよ』って言うと思う。『ここはどういう場所なのか』という根本が違うと思う。ファンはチケット代金などの『モトを取ろう』と思ってとことん楽しむ。また選手も『それが当然だ』と思っている」
日本時代とは大きく異なる環境、違いを常に見つけようとし、それらを楽しんでいる。
「何か新しいものを発見した時には、ブログなどで報告するので見てもらえればうれしいです。本当にすべてが楽しい。プレーだけでなくね。だって僕が選手のヘアーカットなどもしてるんですから。『ジャパニーズ・スタイル? アメリカン・スタイル?』って(笑)」
アスリートが『楽しむ』という感覚は否定されることが多い。だが果たしてすべてが否定されるべきなのだろうか。過酷な環境でも常にポジティブに『楽しむ』ことで、日々のパフォーマンスが上がることもあるだろう。渡辺のストロングポイントはまさに「楽しむ」こと。
この姿勢で上のカテゴリーを目指し、走り続けてほしい。
そして所属チーム、ランカスター・バーンストーマーズは、プレーオフ進出という”結果”を残してみせた。