タイラー・スキャッグスさんの死を受け、MLBと選手会がオピオイド検査導入を検討。代わってマリファナ検査全廃の可能性も
2019/09/10
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米国でも社会問題となっているオピオイド
7月に急逝したロサンゼルス・エンゼルスの元投手タイラー・スキャッグスさんの検視報告書が公表され、スキャッグスさんの血中からオキシコドンとフェンタニルの摂取が認められた。それを受け、MLBと選手会がオピオイド検査の導入を検討し始めたとスポーツ専門局『ESPN』など複数メディアが報じている。
オキシコドンとフェンタニルはともに麻薬性鎮痛剤で、近年米国で乱用が社会問題となっているオピオイドに分類される合成薬品である。本来は手術中や術後の痛みを緩和するために処方されるものだが、精神的に幸福感をもたらし、常習性も高い。さらに、吐き気、呼吸抑制、意識レベルの低下などの副作用があることが認められている。スキャッグスさんの直接の死因も嘔吐物が喉に詰まったことによる窒息死であるとされている。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告によれば、2017年にオピオイド系薬品の摂取が原因とみられる事故で約5万人が死亡した。この20年では述べ50万人以上にも及ぶと言われ、第2次大戦での米国人死亡者数を上回る。そのうちの約半数はフェンタニルが関連している。
オキシコドンとフェンタニルはともに世界アンチ・ドーピング機関(WADA)が定める禁止薬物リストに入っており、MLBもそれに準拠しているにかかわらず、MLBは現在のところオピオイドの検査を行っていない。
マイナーリーグでは薬物検査においてはMLBよりはるかに厳しい姿勢をとっており、オピオイドに関しても検査を行っている。リーグ広報によれば、過去5年間で延べ7万8000件の検査が実行され、そのうちの12件が陽性と判断された。違反した選手に対する罰則は、初回は治療プログラムを受けることが義務付けられ、2度目以上の違反は出場停止処分になる。