「打たせて取る」黒田博樹の投球術も参考? データが語る、田中将大の新スタイル【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、故障からの完全復活を見せている田中将大の新しい投球スタイルについてだ。
2015/06/16
Getty Images
復帰3戦目で黒星もQS達成
現地時間15日(日本時間16日)、田中将大はフロリダ・マーリンズとのインターリーグに登板。
イチローはじめ初対戦の打者に対して、7回94球を投げて9被安打、6奪三振、無四球、自責点2という内容だった。
イチローとの対戦は左前打、二塁内野安打、見逃し三振、遊ゴロで4打数2安打だった。
味方の援護がなかったために2敗目がついたとはいえ、現地時間6月3日に復帰してからの田中は安定感のある投球を続けている。
田中は今、どんな投球をしているのか。データに基づいて見てみよう。
MLBに移籍してからの月間成績だ。
QSは6回以上投げて自責点3以下、先発投手の合格ラインとされる指標。SO/BBは三振を四球で割った比率。先発投手は2.5を超えれば合格点。WHIPは1回あたりの走者(安打、四死球)。1.2以下ならば優秀。
2014年、MLBデビューから最初のDL(故障者リスト)入りまでの田中は、6月まで16試合連続でQSをマークし、圧倒的な好成績で話題となった。しかし、7月に入ると急激に成績が下落し7月9日に右ひじの違和感を訴えてDL入り。以後8月を全休し、9月21日に復帰しているが、数字を見ればわかるように被安打も多く、復活とは言えない状態だった。
2015年は、開幕投手も務めてローテーションの一角を担うものの、前年とは大きく異なり球速は上がらず、制球も悪く4月は4度先発してQSは1度だけだった。そして、4月28日に右手首のけん炎と右前腕部の張りで2度目のDL入り。リハビリ中は、トミー・ジョン手術の必要性を説くメディアも現れた。田中が本当に復帰できるか懸念されたが、6月3日に復帰すると見違えるような投球を見せた。
復帰後、今日まで3回の登板はすべて7回以上投げて、自責点2以下で安定感のある投球をしている。特筆すべきは3試合で1つも四球を出していないことだ。6月は21奪三振、与四球0、SO/BBは計測不能だが、制球力が飛躍的に向上したことがわかる。