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MLBで起こった25年ぶりの『珍事』 野手登板は大敗チームの「リセットボタン」

日本でも、日本ハム・大谷翔平の「二刀流」により、野手がピッチャーとしてマウンドに上がることに驚きが少なくなっているが、アメリカでは長いシーズンを戦い抜く一つの作戦として野手が登板することは珍しくない。

2015/06/22

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野手を登板させる理由とは?

 19年前の1996年夏、日本ではちょっとした『事件』が起こった。東京ドームで行われたオールスターゲーム第2戦。その試合でイチロー(当時:オリックス)が、9回裏のマウンドに上がったのだ。
 
 パリーグ監督は仰木彬。仰木の機転の利いた遊び心もあり、22歳のスーパースターをマウンドへと送り出したのであった。笑顔でライトから走ってくるイチロー。バッターボックスには松井秀喜(当時:巨人)。東京ドームのファンたちは大いに盛り上がったのだが、セリーグ監督の野村克也は明らかに仏頂面。これを侮辱と受け取り、代打に投手の高津臣吾(当時:ヤクルト)を送ったのであった。
 
 日本プロ野球において、野手が登板するという事例はとても少ない。今でこそ北海道日本ハムの大谷翔平が二刀流で大車輪の活躍だが、これは例外中の例外。
 
 懐かしい光景では、1995年5月9日の西武対オリックス戦。9-0でオリックスが大量リードした8回に、西武のマウンドに助っ人外国人野手のデストラーデが登板。結果は1安打(三塁打)、2四球で、1アウトも取れずに14球で降板した。
 
 日米間で野手が登板するということに対し、やや認識の違いがある。メジャーリーグでは野手を登板させることに対して、日本ほど抵抗はない。
 
 野手を登板させる最大の理由は『敗戦処理』。大量リードを許した試合を『捨て試合』とみなし、リリーフ投手を温存する。年間163試合、長丁場を凌ぐ為の知恵とも言えるだろう。前述のデストラーデのような事例を、メジャーではよく目にする。
 
 先日6月16日、ナショナルズ対レイズ戦である『珍事』が起こった。
 
 ナショナルズ12点リードで迎えた8回表。レイズの敗戦は確定的であったため、監督のキャッシュはマウンドに、野手のエルモアを送った。マイナー時代に何度かマウンドに上がった経験はあるものの、もちろん本職は内野手。先頭打者のラモスに対し、まるで打撃投手のようなフォームで投じたボールは、わずか77マイル(123km/h)。ラモスは軽々とスウィングし、ボールはバックスクリーン左へと吸い込まれていった。この後、後続に安打2本を打たれながらも、最速85マイル(136km/h)で何とか打ち取ったエルモア。
 
 そして9回表、今度は若手内野手のフランクリンがマウンドに上がった。1試合に2人の野手がマウンドに上がるのは実に25年ぶり。
 
『急造投手』であるフランクリンは、またもやラモスに甘いボールをレフトスタンドに叩きこまれた。結局レイズはこの長い長い8、9回を、打者13人、被安打6、1死球3失点で終えた。

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