MLBで起こった25年ぶりの『珍事』 野手登板は大敗チームの「リセットボタン」
日本でも、日本ハム・大谷翔平の「二刀流」により、野手がピッチャーとしてマウンドに上がることに驚きが少なくなっているが、アメリカでは長いシーズンを戦い抜く一つの作戦として野手が登板することは珍しくない。
2015/06/22
Getty Images
野手登板は大敗試合からの切り替えが目的
監督のキャッシュは試合後のインタビューでこうコメントしている。
We are extremely appreciative, because they kept two guys from having to throw and kept us that much fresher going into the game tomorrow.
我々はエルモアとフランクリンに非常に感謝している。(終盤の2回に必要な)リリーフ投手2人を休ませてくれたのだ。これで我々は、フレッシュな状態で明日の試合に臨むことができる。
つまり彼らも立派に仕事を果たした、というわけだ。
そして、その珍事からわずか24時間後、今度はカブス対インディアンズ戦で『1試合野手2人が登板』が再現された。
カブス10点リードで迎えた9回表、インディアンズのマウンドには右翼手のレイバーンが上がった。実はこのレイバーン、2年前にも敗戦処理としてマウンドに上がった経験があり、この日の球速も最速88マイル(141km/h)。打者4人に対して被安打1、1四球を与えながらも何とか2死までこぎつけた。そして今度は左翼手のマーフィーにスイッチ。しかしながらマーフィーのボールは、ほとんどが77マイル(123km/h)程度の打ち頃の棒球。カブス打撃陣のめった打ちにあい、仕上げは新人のブライアントに満塁弾をお見舞いされた。
この試合、インディアンズはリリーフ投手を温存できたが、打者一巡の猛攻に合い、ラストイニングを被安打3、3四死球7失点という結果に。
この結果に対しインディアンズ監督のフランコーナは、
We wanted to try to stay away from Zach McAllister. Hopefully, regardless of what the score was today, we start tomorrow fresh. It’s still not a lot of fun to use position players.
我々は、(リリーフ投手である)ザック・マッカリスターを温存したかったのだ。幸い、今日は捨て試合。我々は、明日フレッシュな状態でスタートする。とはいえ、野手を登板させる事は楽しい事じゃないよ。
2人の監督のコメントからもわかるように、彼らの口からは、 ”fresh” (フレッシュ)という言葉が出てくる。こういった試合展開になった場合、指揮官の気持ちはすでに明日に向いている。無駄な消耗は避け、いかに敗戦を引きずらないようにするかに、意識を集中させているようだ。こういった所にアメリカらしい合理的な考え方がうかがえる。
ちなみにこの大敗の翌日、レイズは5-0でナショナルズに快勝し、インディアンズも4-3で接戦を制した。野手を登板させることは、ある意味『リセットボタン』的な効果はあるのかもしれない。
『名将』と呼ばれる監督たちは、やはり選手たちのモチベーションコントロールが抜群にうまい。長い長いレギュラーシーズン。各チームの監督たちが、どのように選手たちのやる気をコントロールしているか、という点に注目してみるのも面白い。
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