「MLBは失敗を恐れない組織」。カブスとヤンキースがマイナー組織に女性コーチを採用、加速するダイバーシティへの取り組み
2019/11/24
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女性がマイナーリーグで初のフルタイムコーチ
シカゴ・カブスは公式ホームページで傘下マイナー組織のコーディネーター及びコーチングスタッフの新たな人事を発表し、その中でレイチェル・フォールデン女史を打撃研究所の主任とルーキーリーグの4thコーチに起用することを明らかにした。女性がマイナーリーグでフルタイムのコーチになることはMLBの歴史で初めてのことだ。
フォールデン女史は元プロソフトボール選手。引退後は自ら設立したトレーニング施設で最先端の科学的データに基づいた野球とソフトボールの教室を主宰していた。また別の野球教室で打撃コンサルタントを務めていた。いくつかの大学と高校でソフトボールチームでのコーチ経験もある(自身のホームページによる)。
奇しくも同日、フォールデン女史と同じファーストネームを持ち、また同年齢(32歳)でもあるレイチェル・バルコベック女史がニューヨーク・ヤンキース傘下マイナー組織の巡回打撃コーチに就任することも発表されている。
バルコベック女史も大学でソフトボール選手であったが、専門は運動科学で修士を取得している。卒業後はストレングス・コンディショニングスのコーチとして、セントルイス・カージナルスとヒューストン・アストロズのマイナー組織での経験が既にある。
元ソフトボール選手の2人には無論のことMLB傘下での選手経験はない。それどころか野球チームに所属したことすらない。女性であるということを差し引いても、カブスやヤンキースといった伝統あるチームが彼女らのように最先端テクノロジーに明るい人材を傘下マイナー組織の指導陣に招き入れるのは、MLB組織が近年進めているダイバーシティ(多様性)への取り組みと同時に科学的な指導方法の導入を象徴するものだと言えよう。
カブスは10月からフォールデン女史が務めていた野球教室の主宰者であるジャスティン・ストーン氏を組織全体の打撃指導を統括するディレクターに採用している。ストーン氏もまたプロ野球選手としての経験を持たない、データや運動科学に基づく打撃指導のスペシャリストだ。さらにカブスはストーン氏と同じような分野の人材を何人も民間の野球教室や大学からコーチングスタッフに迎えることを発表している。彼らに共通するのはコーチよりむしろコンサルタントのようなイメージだ。