アスレチックスの元ドラ1、快挙連発のNFLで“新人王候補”に。MLB全体が被る損失に懸念も
2020/01/05
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アスレチックスが拘束権保持も「未練なし」。才能豊富なアスリートは野球を敬遠傾向?
大魚を逃したアスレチックスだが、マーレイのプロ野球選手としての拘束権利は保持したままだ。もしマーレイが野球に復帰したいと思えば、アスレチックス傘下に入団することになる。だが、その可能性は極めて低そうだ。米メディア『NBCスポーツ』のピーター・キング記者に野球に未練があるかと問われたマーレイは以下のように答えている。
「正直に言って、野球に未練はありません。自分が願うだけのアメフト選手になろうと思えば、いつも最大限の努力をしなくてはいけません。それで精一杯です。まだ野球を続けている友達はいます。彼らと話すこともありますが、野球は既に私にとって過去の思い出になってしまいました。多分、まだ野球をやろうと思えば できると思います。ですが、野球が恋しいかと問われると、私の答えはノーです。実際のところ、野球のことはあまり考えることもなりました」
MLBではたとえドラフト全体1位指名を受けた選手でも、他の選手と同様にマイナーリーグからキャリアをスタートすることを余儀なくされる。そしてメジャーリーグに昇格するまでに数年以上はかかるのが通常である。例を挙げると、マーレイと同じ2018年MLBドラフトで全体1位指名を受けたケイシー・マイズ投手(デトロイト・タイガーズ傘下)はその年にルーキーリーグでプロデビューし、翌2019年には2Aまで昇格したが、未だにメジャーレベルでの出場歴はない。
一方で、NFLやNBA(米プロバスケットボールリーグ)など他の人気スポーツでは通常ドラフト1巡目選手は即戦力のスター選手候補と見なされ、初年度から複数年契約を結び、チームの中心選手として活躍するケースが多い。NBAワシントン・ウィザーズの八村塁選手もその例の1つだ。
層が厚いマイナーリーグで厳しい競争にさらされるMLBの選手育成方法には賛否両論があるだろう。仮にそのせいでマーレイのような類いまれな能力を持つアスリートに野球が敬遠されているとすれば、今回のアスレチックスだけに留まらず、MLB全体が大きな損失を被っているのかもしれない。
角谷剛