MLB、加速する超高学歴化と多様性。ツインズが元NFLスティーラーズのデータ解析専門学者を招聘
2020/01/09
Getty Images
高学歴化が進むMLB
ミネソタ・ツインズが昨年7月まで米プロアメリカンフットボールリーグ(NFL)のピッツバーグ・スティーラーズで解析コーディネーターを務めていたカリム・カッサム氏を野球研究部門のディレクター職(Director of Baseball Research)に新たに迎え入れることが決まった。
カッサム氏がスティーラーズに在籍していたのは2015年7月から2019年7月までの4年間。カッサム氏が就任した当時のNFLはデータ解析をゲーム戦略やスカウトに活用することについてはMLBに遅れをとっていた。スティーラーズとカッサム氏はその先駆けとも言える存在で、現在ではNFLのどのチームもデータ解析の専門家を組織内に抱えているということだ。
昨今のMLBではフロント・オフィスの職員がアイビーリーグ(※)に属するエリート大学の出身者によって占められていることはよく知られている。カッサム氏はその尤なるものと言えるかもしれない。
世界的に有名な理工系名門大学であるインペリアル・カレッジ・ロンドンでコンピューター・サイエンスの修士号を取得し(2002年)、さらにハーバード大学で心理学の博士号を取得(2010年)、そしてカーネギーメロン大学では教授として教鞭を取っている(2010~2014年)。完全に学究肌の人物と思われるカッサム氏の経歴には、アメフトにしろ、野球にしろ、スポーツの競技経験を見出すことはできない。
学問の世界からスポーツ界へと異なるフィールドへ転身するだけではなく、NFL からMLBへと異なるスポーツ組織へ移動することにも目を引かれるが、そうした例が過去にないわけではない。
セイバーメトリクスを世に知らしめた映画『マネーボール』(2011年) の重要な脇役だったピーター・ブランドのモデルとされるポール・デポデスタ氏は映画で描かれたオークランド・アスレチックスに在籍した後、ロサンゼルス・ドジャーズ、サンディエゴ・パドレス、ニューヨーク・メッツとMLB球団を渡り歩き、2016年からはNFLのクリーブランド・ブラウンズで戦略部門の首席オフィサーを務めている。つまりカッサム氏とは反対に、MLBからNFLへとキャリアの場を変えている。そしてデポデスタ氏もまたハーバード大学卒だ。
※編集注)アメリカ北東部に位置する名門私立大学8校(ハーバード大、イェール大、ペンシルベニア大、プリンストン大、コロンビア大、ブラウン大、ダートマス大、コーネル大)の総称。