チームの大躍進にハッキング被害 アストロズのジェフ・ルーノーに見るGMの資質【豊浦彰太郎の Ball Game Biz】
緻密な分析と戦略立案を得意とする元経営コンサルタントのアストロズGMジェフ・ルーノー。彼の成功と躓きには、現場出身ではない現代のGM像が凝縮されている。
2015/06/30
Getty Images
チームの快進撃の裏で起きたハッキング被害
アストロズのジェフ・ルーノーGMが、米国の野球ファンの注目を集めている。ここ数カ月の間に球界全体でも大きなニュースと呼べる出来事に彼が関わっているからだ。それらには、ルーノーにとってポジティブなものもあれば、そうでないものもある。
まずは、彼の評価を上げた事例だ。2011~13年は3年連続100敗以上だったアストロズが、6月28日現在アリーグ最多タイの44勝を挙げ、西地区首位を快走している。
しかし、今季の快進撃は全く予期できぬものではなかった。ルーノーは2011年オフにカージナルスのスカウト部門の要職から転身して以降、徹底的な解体と有望な若手の獲得と育成に力を注いできた。加えて昨オフは、「そろそろ勝負の時」との判断から補強にも転じた。それらが実を結んだのだ。
次は、評価を下げた例だ。昨年明らかになったアストロズのハッキング被害の「犯人」は、古巣のカージナルスだったことが6月中旬に明らかになった。これにより、本来被害者のルーノーは気の毒というより、不用意だったと批判を受けることになった。というのも、被害の直接の原因はルーノーがカージナルス時代と同じパスワードをアストロズ移籍後も使用していたことだからだ。あまりにも、安易なリスクマネジメントだったと言わざるを得ない。
また、カージナルスのように中小規模市場にありながら、過去15年で2度の世界一を含みプレーオフ出場11回という球界有数の優等生球団が、リーグも異なり低迷を続ける弱小球団の情報を盗み取ろうとしたということは、組織ぐるみではなくルーノーを快く思わないスタッフによる犯行だったという見方もある。
これをもって、「ルーノーは仁徳に欠ける」と結論付けるのは性急だ。しかし、ノースウェスタン大でMBAを取得した元経営コンサルタントの彼は、分析や戦略立案などのビジネススキルには長けているが、統率力や対人コミュニケーションなどのヒューマンスキルは必ずしもそうではないとの評判が付きまとっているのも事実だ。
前監督のボー・ポーターとの確執などは、彼の弱点が露呈した典型例との見方もある。ルーノーは自分とは正反対の理論より実践、データより情熱をモットーとするポーターをうまく御し切れず、昨年9月という中途半端な時期に解雇した。