MLBがついに「蔓延する不正行為」を正すか。サイン盗みより罪重い?ボールに塗る禁止物質の提供と使用
2020/03/07
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レッズ右腕バウアーが証言「70%の投手が速球の回転数を上げる目的で使用」
何はともあれ、ハーキンズ氏の解雇はボールに物質を塗ることを禁じたルールをMLBが厳格に運用し始めることの表れと見るべきだろう。その兆候はあった。『ニューヨーク・ポスト』は2月にMLB新副社長クリス・ヤング氏(元投手でもある)が各球団のスプリングトレーニング(春季キャンプ)の地を訪れ、選手達にこの件について監視が強まることを周知していたと報じている。
MLBのこの動きはヒューストン・アストロズのサイン盗みスキャンダルへの対応であるともとれるし、あるいはシンシナティ・レッズのトレバー・バウアー投手がアストロズの投手たちが松ヤニか他の粘着性のある物質をボールに塗ることで不当な利益を得ていると発言したことに対するものなのかもしれない。
バウアーは2月にケーブルTV局『HBOスポーツ』の番組に出演し、MLBのおよそ70%の投手が速球の回転数を上げる目的でそうした物質を使用していると話した。バウアーによれば、投手がボールに異物を塗ることで、ステロイドを利用するよりも容易に回転数を上げることができるということだ。
バウアーは自分自身も物質使用を1イニングだけ試したことがあると明かし、その際のデータでは自分が投じたボールの回転数が通常よりはるかに大きくなったと告白している。だが自らの倫理観から不正使用を続けることをしなかったとも述べている。
この発言にどれだけの信ぴょう性があるかは判断が難しい。だがそこに何かしらの真実が含まれているとしたら、サイン盗みと同様の由々しき問題であると言わざるを得ない。ステロイド時代に活躍したバリー・ボンズ氏、ロジャー・クレメンス氏、サミー・ソーサ氏、マーク・マグワイア氏、アレックス・ロドリゲス氏など、十分以上の実績を持ちながらも未だに野球殿堂入りを果たしていない元選手たちが大勢いる一方で、バウアーによればストロイド以上の効果がある不正を行いながら好成績を挙げている投手が高い割合で存在するということになるからだ。
ヒューストン・アストロズのサイン盗みスキャンダルに対して厳しい非難の声を上げた選手たちの中に、松ヤニを使っていた投手がもし含まれているとしたら皮肉なことだ。松ヤニをボールに塗ることも、相手チームのサインを盗むことも、あるいはステロイドを使って筋力を増強することも、ルールに違反して不当に利益を得る行為であることに変わりはない。
ハーキンズ氏の解雇がトカゲのしっぽ切りで終わるのか、あるいは球界に蔓延する不正行為を正すきっかけになるのか、今後の展開に注目したい。