ヤンキース・田中将大から『遠慮」が消えた日
ヤンキースの田中将大投手が10日の本拠地アスレチックス戦で1カ月ぶりの白星を飾った。今季5勝目をマークし、いい形で前半戦を締めくくった。
2015/07/11
Getty Images
球種の選択に反省
「一番反省するところは2点目取られたところですよね。ゲッツーでせっかく守備で助けてもらって2アウト三塁という形を作れたのに、そこで切っておけば良かったんですけど…。まあ、そこでタイムリー打たれて2点目取られてしまったってところは、やっぱり自分の中ですごく悔しい部分がありますね」
2失点した2回は5番・バトラーの左適時二塁打で1点を失った後、6番・デービスに四球を与えたが、7番・ロウリーを遊ゴロ併殺打に仕留めた。しかし、二死三塁としたところで続く8番・カナに1ボール1ストライクからの3球目、高めに浮いたフォーシームを痛打され、右中間適時二塁打とされてしまった。田中が悔やんだのは、このカナによって2失点目を喫した場面だ。実を言えば彼はこのシーンについて、さらに詳細なコメントも試合後、日本人メディアの前で発している。
「2点目のケースはやっぱり…。真っ直ぐが甘くなったボールがツーベース打たれたんですけど、その前のやっぱり甘いスプリットも真っ直ぐのタイミングで振りに来てファウルになっていたので…。そこをやっぱり自分でももっと敏感になって球種、自分で首振って選択したほうが良かったなと…。そういうのは自分では振り返って思うので。その辺の細かいところの球種の選択っていう部分が、自分でももう少しかなっていうのがありますね」
1ボールからカナに投じた2球目は88マイル(141.68キロ)のほぼ真ん中に甘く入ってしまったスプリット。これをカナはフォーシームのタイミングでスイングしたが、打ち損じてファウルになった。相手が〝真っ直ぐ狙い〟とわかっていながら、3球目にフォーシームを投じてしまった――。そう悔やむ田中の姿から察することができるのは、やはりバッテリーを組むマキャンに対する「遠慮」である。
思い起こされるのは、昨年6月28日に本拠地ヤンキースタジアムで行われたレッドソックス戦での登板だ。1-1の9回二死走者なしの場面、田中はナポリを1ボール2ストライクと追い込み、マスクをかぶっていたマキャンのサインに2度首を振って、この日最速となる96マイル(154.56キロ)の速球を投じた。しかし、これが高めに浮いてしまい、右翼スタンドに運ばれる決勝ソロを許した。
ダイヤモンドを一周して三塁側ベンチに戻ったナポリが「What an idiot(何て間抜けなんだ)」と発したコメントが、全米で試合中継していたテレビ局『FOX』のマイクに拾われ、大騒ぎになったことは記憶に新しい。因果関係があるかどうかはもちろん断言できないが、この日を境に田中が正妻のマキャンを筆頭とした捕手のサインに首を振るシーンは減っているように見受けられる。
「いい形で前半戦が終われた」と振り返った田中。スランプから抜け出すと同時に、さまざまな収穫があったプラス要素の中には〝マキャンのサインに遠慮はしない〟という思いを強めたこともあったのではないかと思う。蘇った田中の後半戦登板に期待したい。