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【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】平野佳寿投手は、MLBでも成功するタイプの投手~黒田博樹投手、カーショウ投手らに共通する「好投手の条件」

ベースボールチャンネルでは、月2回、読売ジャイアンツなどでプレーし、その後ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして当時、黒田博樹投手や齋藤隆投手の入団に携わった小島圭市氏の連載をスタートさせます。小島氏は現在、(株)K’sLabを立ち上げ、スポーツ環境の向上から青少年の育成に積極的に関わっています。この連載では、日本の野球界が発展するための視点から、一つのテーマを深く掘り下げ、野球ファンや、野球指導に携わる皆さんに問題提起をしていきたいと考えています。さて、1日からMLBのプレーオフが始まり、日本も11日からクライマックスシリーズが始まります。第2回目のテーマは、元スカウトから観た「好投手の条件」です。

2014/10/10

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一流選手は、みなセルフコントロールができる

 また、「好投手の条件」の一番大事な要素として、セルフコントロールできるかどうかが重要です。自分を客観的にコントロールできるかどうか。プライベートでも、マウンド上でも、ベンチ内でも。自分に何が足りないかを分析できることは大事です。

 MLBのプレーオフを見ていると、好投手は打たれても一喜一憂しません。レギュラシーズンに比べれば、多少は出てくるのは事実ですが、好投手ほど、物静かです。田中投手もMLBでは、一喜一憂しなくなりました。アメリカの慣習に倣ったのでしょう。
 今季リーグ最多の21勝を挙げたドジャースのクレイトン・カーショウ投手は、まさに人間的な要素が優れています。彼は、若い年齢であるのに、乱れることがなく、人をかばったりする性格の持ち主です。二十歳くらいからアフリカに行って、ボランティア活動をしています。
 
 ボランティアは、お金があるからできるものだと穿った見方をする人もいるでしょうが、彼は、試合において自分が投げない時も、ブルペンに行って仲間を応援し、ベンチの一番前で声を出しています。若くして大エースになって、なかなかできないことだと思います。MLBでも、日本国内でも、そういう投手はいるでしょうか。ロッカールームにいるチームメイトがそれをみな感じていて、彼が打たれても、文句を言う人は誰もいないのです。
 
 また、カーショウ投手は、グラウンドに足を踏み入れる時間から、キャッチボール、投げ込みをする時間など、すべて決めて動いています。何時何分にグラウンドに入り、何時何分までに何球投げてと分単位で動いているのです。全て自分で決めたルーティンに沿って動いている。

 そういうところに、彼のメンタルの強さを感じます。行動で人を認識させることは、すごく時間がかかることですが、彼は、その部分においては、あの年齢で、他の追随を許していないです。
 
 昔は、やんちゃな性格である方が華やかな舞台では活躍できると言われました。
 今はそうではなくなってきているのです。日本では昭和のころ、アメリカでいえば、1960年代も話ですが、アメリカにはたくさんのお手本がいるので、そうなっていったのでしょう。
 日本もそうなっていけば、もっといい選手が出てくると思います。黒田投手と斎藤隆投手は人間性がよく、そういった部分がしっかりとできていました。彼らがMLBで活躍したことは、偶然じゃないと思います。

 そういった観点で日本人投手を見ていくと、現在、日本で注目されている投手では、オリックスの金子千尋投手は一喜一憂しない印象があります。チームメイトに迷惑を掛けるような投手には感じません。

 また、金子投手とチームメイトの平野佳寿投手は、大学の時に見たことがあります。あの年齢の中では身体が強いという印象はありましたが、力んで投げるタイプのピッチャーであったと思います。今もその名残がみえますが、彼はショートイニングですから、それほど大きな問題ではないでしょう。

 彼は、MLBでも十分に通用する力を持っていると思います。現在は、疲れが残っていて、身体が躍動していないのです。身体をリフレッシュさせて、それを取り除いてあげる。しっかりと教えてあげたら、MLBで面白い存在の投手になります。
 アメリカでは、中継もローテーションですから、休みを取りながら投げられますから。そうしたら、94.5マイル(150キロ)を投げ、あのフォークは大きな武器になります。
 平野投手は、たくさんの経験を積み、打者の抑え方を知っています。

 斎藤隆投手のような成功例というのが、平野投手は近いかもしれないですね。

小島圭市 (2)

元ロサンゼルスドジャース 日本担当スカウト
小島圭市(こじま・けいいち)

1968年7月1日、神奈川県生まれ。東海大高輪台を卒業後の86年、ドラフト外で巨人に入団。 92年にプロ初勝利を挙げるなど、3勝をマークした。その後は故障に泣かされ、94年のオフに 巨人から戦力外通告。巨人在籍中の怪我の影響で1年浪人のあと、96年テキサスレンジャーズとマイナー契約。1年間、マイナーリーグで活躍 した。翌年に日本球界に復帰し中日ドラゴンズでプレー。その後は、台湾の興農ブルズなどで活躍し、現役を引退した。01年日本担当スカウトに就任。石井一久、黒田博樹(ヤンキース)、斎藤隆(楽天)の獲得に尽力。三人が活躍したことから、スカウトとしての腕前を評価された。2013年にスカウトを退職。現在はジュニア育成のため、全国の小・中学生の指導者へ向けた講演会活動や少年野球教室を展開。2014年には会社「K’sLab」を設立。その活動を深く追求している。

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