【MLB】単なる「一発病」にあらず 被弾の内訳から見える、田中将大の優れた投球術
ヤンキース・田中将大が4日のレッドソックス戦に先発し、6回0/3を5安打3失点で8勝目を挙げた。この試合でも本塁打を浴びて、昨シーズンを上回った。そんな田中に対して一発病を指摘する声があるが……。
2015/08/06
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被本塁打の内訳から見えるもの
田中は楽天時代から、走者を背負うごとに投球のギアを上げてきた。被打率は走者がいない状態が最も高く、一塁、得点圏、満塁と状況が悪化していくごとに、被打率は対照的に下がっていく。
これはシーズンを通じて、長いイニングを投げ抜く上で、最も必要となる投球術の一つだ。一発を警戒して走者もいない状況から慎重に投げていては、無駄な球数を浪費してしまう。そこは積極的にストライクを奪いにいき、可能な範囲内で力で抑える。時には相手打者の打ち損じを誘う。
一方で走者を2人以上ためた状態では、一発を浴びれば致命傷となってしまう。そこだけは避ける危機察知能力と状況判断力。そしてギアを上げた投球のポテンシャルの高さが、この被本塁打の内訳からよくわかる。
となれば、打たれた本数だけで騒ぐのは無駄な議論とも言える。見るべきは打たれた状況。ソロ本塁打なら許される場面なのか、一発だけは絶対に避けなければいけない場面なのか。
田中が自身の公式サイトで「自分の技術不足もあるし、いろんなところがありますね」と悔やんだ4日のサンドバルへの被弾は、そういう意味でいえば一発を避けたい場面だった。味方が再逆転してくれた直後。しかもこの一発で首脳陣は見切りをつけ、球数がまだ88球だった田中に降板を告げている。
一方で2点リードだったこともあり、最悪でもソロ本塁打だけなら許容できる、というケースでもあった。可能な限りのリスクを取り勝負した結果、制球ミスで自ら早期降板を招いた。それでもリードは消さず、チームを勝利に導くことはできたわけだ。
何より田中は、今後中4日の起用も含めフル回転の活躍が求められる立場だ。表面的な被本塁打増には、実はあまり意味がない。ソロOKの場面なら、これまで通りに積極的にストライクゾーンで勝負し、最少失点で長いイニングを投げ抜いていくことこそが、一番求められている。