もしもイチローが最初からMLBでプレーしていたら――通算安打数をシミュレーション【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、イチローが高校卒業後すぐにMLBに挑戦した場合の安打数をシミュレーションしてみた。
2015/08/20
Getty Images
イチローのMLB成績をシミュレーション
イチローの通算安打数が日米通算4192本に達し、MLB史上2位のタイ・カッブの記録を抜いた。もちろんこれは参考記録であり、日米の公式記録には影響を与えることはない。
「日米通算はナンセンス」という声もあれば「リーグ、国は違っても大したものだ」という意見もある。中には「イチローが最初からMLBに挑戦していたら、当然タイ・カッブや1位のピート・ローズを抜いていた」という話もある。
今回は、これについてシミュレーションしてみる。
なお私は昨年出した本で一度シミュレーションをしているが、今回は別の条件も加えて新たに考えてみる。できるだけ無理がない、自然でリアルなシミュレーションをしてみたい。
まず、MLBにどうして入団するか。いきなり無理な設定だが、1991年イチローはNPBのドラフト指名にかからなかったとする。しかしMLB、シアトル・マリナーズのスカウトは彼の素質を見抜き、翌年6月のMLBのドラフト5巡目で指名。日本側もこれを容認。2013年、加藤豪将がドラフト2巡目でヤンキースに入団していることを考えれば、この評価はあり得るだろう。ドラフト同期には、1歳下のデレク・ジーター(1巡目)や大学を経た2歳上(学年は3つ上)のジェイソン・ジアンビ(2巡目)がいる。
イチローは92年の夏からマイナーリーグの試合に出場する。
実際のイチローのNPB二軍成績をまとめた。
ものすごい数字を挙げている。この間、2軍記録となる46試合連続安打(1軍記録は33試合)を記録。すでに高卒1年目で2軍では敵なしだった。イチローが天才と呼ばれる所以である。
おそらくMLBマイナーでも圧倒的な数字を残しただろう。しかしMLBはNPBと異なり、ファームで好成績を上げたからといってすぐに昇格できるほど甘くはない。特に体が小さく、細いイチローは本当に上で通用するか、じっくり試されるはずだ。
ここはデレク・ジーターと同様、4シーズン、マイナーで経験を積むと考える。
イチローのマイナーでの成績をシミュレーションしてみる。
ドラフト指名を受けてアメリカにわたり、夏からのショートシーズンのルーキーリーグで早速結果を出す。2年目はA+でまた好成績。3年目はAAに昇格し、シーズン半ばにAAAまで登る。有望選手=プロスペクトはこういうステップアップをする。
そして95年には、AAAでフルシーズン戦って、また好成績。タコマではすでに1年遅れて入団したアレックス・ロドリゲスが追いついてきた。彼はすでに前年MLBデビューを果たしている。95年の9月、イチローはMLBデビューを果たす。イチローは尊敬していたケン・グリフィやエドガー・マルチネスと共演する。
ただし、背番号は52。大投手ランディ・ジョンソンが51をつけていたからだ。