脇本直人「いつか恩返しを」 ”機動破壊”の実践へ『今日より明日』【マリーンズファーム通信#6】
一軍での活躍を夢見て、日々二軍の浦和球場で汗を流す選手を、マリーンズ広報がクローズアップする連載『マリーンズ浦和ファーム通信』。第6回目は、ドラフト7位ルーキーの脇本直人外野手だ。俊足好打の外野手として期待されているが、今はプロの水に慣れる毎日、いつか支えてくれた人々のために……脇本は今日もバットを振り続ける。
2015/09/07
画像提供/千葉ロッテマリーンズ
甲子園を沸かすも、プロのレベルの高さに四苦八苦
昨年夏、「機動破壊」という言葉が高校野球界に旋風を巻き起こした。
足を徹底的に絡めた攻撃スタイル。その群馬・健大高崎高校の中心に脇本直人外野手はいた。そして俊足好打の外野手として注目を集めてのプロ入り。マリーンズにあって、機動破壊野球の実践が渇望された。
しかし、プロの世界は甘くはない。甲子園を沸かせたスター選手は、思い描いたプレーが出来ずに、もがき苦しんでいる。二軍の本拠地のあるロッテ浦和球場で日々、壁にぶち当たりながらも前に進もうとしている姿がある。
「全然ヒットは打てませんし、走塁でも守備でもミスが多い。怒られてばかりです。先輩を見ていると、その差をすべての面で感じます。自分が思い描いているプレースタイルはあるけど、それと現実のギャップは大きい。もがいています」
毎日、悩み、落ち込む。一日が終わり、ロッカーに戻ると肩を落とす姿を見る事も少なくない。それでも、しばらく気持ちを落ち着かせると、立ち上がる。大切にしている言葉が脇本を支えている。3月2日に行われた健大高崎高校の卒業式で担任の男性教師からプレゼントされた言葉だ。
後悔したくない! やると決めた日課
卒業式が終わり、全員がクラスに戻った時、「今からオレからの卒業証書を渡す!」と言って、担任教師は生徒一人ひとりに直筆のメッセージの書かれた色紙がサプライズで渡された。脇本には「厳しい世界だと思うけど、頑張れよ」と握手を求められ、渡された。机に戻ってから、ジッと読み続けた。何度も読み返した。こう書かれていた。
『脇本 直人君 卒業おめでとう。人生は山あり谷あり。それが普通です。苦難を克服するたびに人は成長するのです。目標を見失うことなく立派な人財を目指して努力してください。努力は決して裏切らない』
3年間、担任を務めてくれた。本気で怒られたこともあった。野球以外のことで相談をしたこともあった。そんな先生はプロの世界に飛び込むルーキーに直筆のメッセージを送ってくれた。
言葉の重みを感じ、このメッセージを忘れないために色紙は寮の自室の机の上に目立つように置いた。プロのレベルの壁に悪戦苦闘している今。身も心もクタクタになりながら、寮の自室に戻り、色紙に目をやると涙がこぼれ落ちそうになる。
だけど、卒業式で先生と苦難を乗り越えて成長をすると誓った。だから、クヨクヨはしていられない。「今日より明日」の想いで前を向く。
「うまくはいかないことのほうが多いし、怒られることも多い。自分でも、なんで言われたことができないんだろうって落ち込む。でも、それが今の自分の現実。今日より明日。明日より明後日。少しでも成長したいという思いで日々を過ごすようにしています」
全体練習が終わり、試合が始まるまでの昼食時間にも室内練習場で打ち込む。試合が終わり、夕食を食べ終わるとバットを手に寮の最上階にあるトレーニングルームに向かう。誰もいない部屋の電気をつけると1時間、素振りをするのを日課にしている。疲れているときもある。バットを握りたくないときもある。
でも、後から後悔はしたくはない。だからやると決めた日課は絶対に怠らない。