敬遠策の是非――。選手サイドの自主性が時代の流れを変える
シーズン終盤に個人タイトル争いが激化すると、必ずと言っていいほど議論となるのが、敬遠策の是非。今季は、オリックスが楽天の銀次に対して行った5打席連続四球が、野球ファンの間で話題となった。打率トップを走る自軍の糸井にタイトルを取らせたいオリックスベンチに対して、為す術がない銀次と憤りを覚える楽天ファン。立場の違いから生まれる敬遠策の是非と、その解決のヒントについて考える。
2014/10/16
勝負してもらえなかった銀次
10月4日、楽天対オリックス戦が行われたコボスタ宮城に、楽天ファンのブーイングが響いた。
初回、打率.326で首位打者争いの2位につける楽天の銀次が打席に立つと、オリックスバッテリーはいきなり敬遠を選択。オリックス先発の松葉のボールはすべて外角へと大きく外れ、勝負してもらえなかった銀次は固い表情のまま一塁へと小走りで向かっていく。
シーズン最終盤の一戦。この時点で、パ・リーグの首位打者は打率.331を記録していたオリックスの糸井嘉男。その糸井を5厘差で追っていたのが、ミート力に定評のある左打者の銀次だった。
銀次はこのゲームで5打数4安打、もしくは4打数4安打を記録すれば糸井の打率を上回り、首位打者争いのトップに立つことができる。楽天ベンチは銀次の打撃機会を少しでも増やそうと、トップバッターに起用。一方の糸井は首位打者を確実なものにさせるために、スタメンを外れてベンチに座っていた。
しかし、その後もオリックスの敬遠策は続く。銀次はこの日5度打席に立ったが、一度もバットを振らせてもらえないまま、ゲームはオリックスの勝利で終了。銀次が打席に立ち、ボールがストライクゾーンから大きく外れるたびに、場内には楽天ファンからのブーイングがとどろいたが、オリックスバッテリー、そしてベンチは最後までぶれなかった。
以降、シーズン終了までに楽天は2試合、オリックスは1試合を消化。銀次は2試合で3安打を記録したものの、糸井の打率を上回ることはできず、パ・リーグの首位打者は糸井に確定した。
今季に限らず、こうした状況下で勝負を避けるケースは少なくない。
4日の試合後、敬遠を仕掛けた側のオリックス森脇監督は「(敬遠策は)言うまでもない。(糸井)嘉男が特別ではなく、うちの選手が特別」とコメント。チームに微差で首位打者を争う選手がいる以上、その可能性を少しでも高める策をとるのは、チームを指揮する者として当然という態度を示した。