2014年ドラフトは”不作”を”豊作”に。高校生中心に切り替える球団も――下位指名から問われるスカウトの眼力
今年のドラフト会議を目前に控え、各球団のスカウトは頭を悩ませているという。即戦力と呼ばれている大学生の選手がケガをしたり、不調だったりで、上位候補をまだ絞りきれていない状況だからだ。そこで、高校生中心に指名を切り替える球団も出てくる可能性がある。埼玉西武ライオンズは、前橋育英の高橋光成投手を1位指名することを発表した。全体的に"不作"と評される今年のドラフト。しかし、こういう年こそ、スカウトの腕の見せどころだとも言う。これまでの歴史を紐解くと、高卒の下位指名された選手がチームの中心選手になる例は多々ある。果たして、今年はどのようなドラフトになるのだろうか?
2014/10/16
野球に興味のある選手は、成長する
現役プレイヤーでいえば、イチロー(愛工大名電→91年オリックス4位)、三浦大輔(高田商→91年大洋6位)、福浦和也(習志野→93年ロッテ7位)、多村仁志(横浜→横浜4位)、鈴木尚広(相馬→96年巨人4位)、川﨑宗則(鹿児島工→99年ダイエー4位)、岩隈久志(堀越→99年近鉄5位)、畠山和洋(専大北上→00年ヤクルト5位)、中島裕之(伊丹北→00年西武5位)、栗山巧(育英→01年西武4巡目)、成瀬善久(横浜→03年ロッテ6巡目)、中島卓也(福岡工→08年日本ハム5位)、西野勇士(新湊→08年ロッテ5位)、橋本到(仙台育英→08年巨人4位)、近藤健介(横浜→11年日本ハム4位)、上沢直之(専大松戸→11年日本ハム6位)らがそうだ。
このほとんどは、入団後、二軍で鍛えられ、その後に一軍で活躍した選手たち。前出のスカウトは次のように語る。
「二軍とはいえ、そのレベルに達していないと試合に出られないわけですから、高校生を見る時は、まず現時点で二軍の試合に出られるだけの選手なのかを判断します。イチローのように1年目から二軍で首位打者を獲るような選手は稀ですが、たとえば野手なら、足が速いとか、守備が抜群にうまいとかだけでもいい。投手なら、球が速いとか、キレのある変化球があるとか。どれかひとつでもそのレベルに達していればいいんです。あと、1年間試合に出られる体力も必要になってきます。そこの見極めは大事ですね」
そしてスカウトがもうひとつ付け加えたのが、野球への姿勢だった。
プロを目指すような選手は誰もが野球好きと思うのだが、実はそうでもないという。
「たとえば、凡打しても一塁まで全力疾走しないとか、カバーリングを怠っているとか、何も指示を出さないとか……。そういう選手は自分にしか興味がないんです。毎年、いろんな高校生を見ていますが、評価の高い選手ほどそうした傾向は強い。ただ、その中で何かひとつでも特長があって、野球に興味のある選手は成長する確率が高いと思います」
今年、高校生のドラフト候補は、最速157キロ右腕の安樂智大(済美)、2年夏に全国制覇を達成した高橋光成(前橋育英)、高校通算73本塁打の岡本和真(智弁学園)、この夏の甲子園で優勝候補の東海大相模を下した松本裕樹(盛岡大付)らの評価が高く、上位指名確実とも言われている。
その他にも、投手では、石川直也(山形中央)、佐野皓大(大分商)、野手では宗佑磨(横浜隼人)、香月一也(大阪桐蔭)、脇本直人(健大高崎)といった選手たちがスカウトから注目を浴びている。
プロ志望届を出した高校生は総勢94人。はたして、この中から何人の選手が指名されるのだろうか。そして数年後、何人の選手が一軍の舞台でプレーしているのだろうか。〝不作〟を〝豊作〟だったに変えることができるのだろうか。