NPB球史に残る大接戦に。柳田悠岐と秋山翔吾の「首位打者争い」【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は「パ首位打者争い」だ。
2015/09/12
ともにシーズン終盤まで高打率をキープ
ソフトバンク柳田悠岐と西武秋山翔吾の首位打者争いはまだ決着がついていない。
5月半ばから実に4カ月。ここまで長期間、高打率を維持しながら競り合うのも珍しい。
ともに1988年生まれの同い年。ドラフトも同じ2010年でポジションも同じ。タイプは違うがライバル心が燃え上がっているのがわかる。
二人のデッドヒートを週単位で見ていこう。赤字はリーグ1位。24週は途中まで。
開幕週で.486と大爆発をした柳田を、3週目.591と驚異的な打率を記録した秋山が追いかける。
第7週には二人は1、2位となり、以後、ともに好不調の波を繰り返しながらも、ここまで高打率をキープしている。
柳田がコンスタントに安打を稼いでいるのに対して、秋山はときおり.550を超える爆発的な打棒を見せる。そのたびに柳田は逆転されている。
すでに今季の首位打者争いは球史に残るレベルに達している。
まず、.360を超える高いレベルでのデッドヒートはNPB史上初だ。これまで5厘差以内で最も打率が高かったのは、後述する1976年の中日谷沢健一.35484、巨人張本勲.35478だった。
柳田も秋山もここまで全試合出場。二人は休まず、3カ月以上バットマンレースを続けてきた。
今週に入って柳田が大当たりしているのに対し、秋山は7打数無安打。4厘3毛差がついた。
柳田はトリプル3(30本塁打、30盗塁、打率3割)をほぼ確実にしている。
しかしパリーグ打撃3部門のうち本塁打、打点は西武の中村剛也が当確。盗塁は現在28で3人が並んでいる。
トリプル3を樹立しても「無冠の帝王」になってしまう可能性があるのだ(出塁率のタイトルは「当確」だ)。チームとしての優勝、日本一は当然だが、個人として首位打者タイトル獲得への意欲は並々ならぬものがあるはずだ。
一方の秋山も最多安打のタイトルを確実にしてはいるものの、マット・マートンが持つNPB記録214安打更新の期待が懸かっている。秋山も、ここからまた盛り返す可能性は十分にある。
そうなれば、最後の最後まで僅差の打率争いが繰り広げられるだろう。