プロ11年目待望の初アーチ、一歩ずつ前へ 青松慶侑、改名で再スタート【マリーンズファーム通信#7】
プロ9年目で初ヒット、初打点。11年目で初本塁打。選手としては遅咲きかもしれないが、着実に前へ進んでいる。9月11日、青松は強い決意から名前の漢字を「敬鎔」から「慶侑」に登録変更をして心機一転、再スタートした。
2015/09/13
写真提供/千葉ロッテマリーンズ
転機となった二人の人物との出会い
意気揚々とプロの道に足を踏み入れた青松だが、なかなか思い描く結果を出すことはできなかった。入団した際は捕手。一つしかないポジションに、試合に出るチャンスも少なかった。
ファームでも規定打席に到達したことがない中、月日が流れた。転機は2012年の秋季キャンプに訪れた。就任したばかりの伊東勤監督は鴨川での秋季キャンプで、その打撃を目に留めた。打撃練習が終わるとゲージ裏に呼ばれた。
「打撃を生かすために内野手をやってみないか?」。8年目のシーズンを終えた青松は指揮官の言葉に背中を押されるように決意をした。なによりも自分を見てくれていて、評価してくれていることがうれしかった。
「未練はなかったですね。自分の中でも現状を打破するためには、なにかを変えないといけないというのはわかっていたから。決めたからには打撃で結果を出そうと思った」
この年、もう一つの出会いがあった。
G.G.佐藤外野手がテスト入団してきたのだ。
西武ライオンズで07年から3年連続で20本塁打以上を放った右の長距離砲。大学を卒業後、アメリカのマイナーに入団するなど苦労人としても有名だった。青松はそんな姿を自分にダブらせた。話をする機会は2月の春季キャンプの終盤。思い切って声をかけた。
「スイマセン。ウェートを本格的に始めたいのですが、教えてもらえませんか?」。
笑顔で返事が返ってきた。
「ウェートに興味あるの?頑張ろうよ!」。それからは師弟関係のように一緒にいる時間が増えた。ウェートはもちろん、打撃練習、プライベートではファッションにまでアドバイスをくれた。一番の助言は打席に立つ上での心がけだった。
「ハッタリでもいい。打席では威圧感が必要だ。コイツなら、なにかやりそうだというね。だから、打席では弱気は絶対に見せてはいけない。雰囲気を出せ」
その言葉にハッとさせられた。
振り返ると数少ない一軍のチャンスを掴んだとき、どうしても打席では結果を出さないといけないとオドオドしてしまっていた。絶好球を打ち損じてファウルになったり、見逃したりすると「しまった」と顔に出ていた。
それを見たマウンドの投手はどう思うか。それよりもどんな場面でも、たとえ動揺をしていても表に出さず、堂々としていたほうが投手にとっては不気味で、仲間たちから見ても、自分にとってもプラスに運ぶ。そう悟った。それから打席での強く威圧感を意識するようになった。