前人未到の世界へ 過去3割到達なしの秋山翔吾が、200本安打を積み上げられた理由【中島大輔 One~この1本をクローズアップ】
ライオンズの秋山翔吾が、13日のロッテ戦の5回裏にロッテ先発の涌井から内野安打。これで今季通算200本目、史上6人目の快挙となった。昨年まで一度も3割に到達していなかった男がなぜ今季これだけの安打を量産できたのか。今回は5回のその200本目から秋山の今季の変化についてクローズアップしたい。
2015/09/14
200本目の安打は、今季の秋山を象徴する一打に
ライオンズファンが待ち望んだ一打は、メモリアルを飾るにふさわしいような当たりではなかった。だが、今季200本目の安打は、秋山翔吾の進化をある意味で象徴するような当たりだった。
9月13日に行われたロッテ戦は1対1で5回裏を迎えると、2死1塁で秋山に打席が回ってきた。相手先発の涌井秀章が牽制ミスで走者を2塁に進め、2ボール、2ストライクから投じた5球目。142kmのシュートが外角低めのボールゾーンに逃げていくと、秋山は「追い込まれてしまったので、何とかバットに当たれと思って食らいついた」。
逆方向に飛んだ当たりは三塁手のグラブを弾き、レフト前に転がる。記念すべき今季200本目のヒットは、チームに一時勝ち越し点をもたらせるタイムリーとなった。
フェンスを豪快に越える本塁打、外野の間を切り裂く二塁打、きれいにセンター前に弾き返す安打など、数々のヒットを積み重ねてきた今季だが、内野安打で200本目を飾ったことをどう思うか。試合後の会見で聞かれると、秋山はこう答えている。
「『どんな形でもヒットはヒット』と今年はずっと思っていました。当たりが良かろうが、悪かろうが、それは野球の中にあることなので。そういうヒットがたまたま200本目だっただけ、ということだと思います」
秋山は大卒1年目の開幕戦からスタメンで出場し、首脳陣から大きな期待を寄せられてきた。昨季まで1度も打率3割を記録したことがなかった大器は入団5年目の今季、球界で誰より多いヒットを積み重ねている。
「バットを寝かせただけなのに、なんで急にヒットを打てるようになったのか」
今季序盤、放送局関係者とそんな話になったことがある。秋山の打撃における昨季までと今季の目に見えた変化は、立てて構えていたバットを寝かせるようになったくらいだ。