前人未到の世界へ 過去3割到達なしの秋山翔吾が、200本安打を積み上げられた理由【中島大輔 One~この1本をクローズアップ】
ライオンズの秋山翔吾が、13日のロッテ戦の5回裏にロッテ先発の涌井から内野安打。これで今季通算200本目、史上6人目の快挙となった。昨年まで一度も3割に到達していなかった男がなぜ今季これだけの安打を量産できたのか。今回は5回のその200本目から秋山の今季の変化についてクローズアップしたい。
2015/09/14
考え方を変えた2015年
自他ともに認めるほどマジメな性格が、良くも悪くも秋山の持ち味だ。マジメに考えすぎるあまり、ドツボにはまることも少なくなかった。秋山はそう自覚しながら、なかなか直せないのがこれまでの4年間だった。
だからこそ今季、あえて考え方を変えるようにしている。マジメに考え抜いた結果、新たな視点にたどり着いた。
「『いい当たりだけがヒットじゃない』というところが、今年は一番大きいメンタルの持ち方です。去年はシーズン序盤の数字が悪かったので、どんな形でもヒットがいいと思っていました。逆に、たまにきれいに打ててもヒットにならないときがあったので、それが次の打席だったり、次の日であったり、どうしても『もったいないな』という思いがすごく強かった」
どうすれば、打率3割を残すことができるか。そう考え抜いた結果、秋山は気持ちの持ち方を変えることにしたのだ。
「次の日は次の日、次の対戦ピッチャーだし、次の打席は違うピッチャーが出てくるかもしれないし、同じピッチャーになるかもしれないと、前向きな考え方が少し持てるようになりました。トータルで言えば、引きずらないで次の打席、ということで。反省は終わってからしっかりちゃんとしますけど、試合中の準備の段階ではマイナスにならないように、という考えでやっているつもりです、今年は」
そうした気持ちで打席に立ち続けた結果、内野安打という形で200本目のヒットに結実したのだった。
残り13本で日本記録
会見中、時折安堵の表情を見せた秋山は、ある質問に表情を硬くしている。日本記録となるシーズン214安打について振られたときだ。
「200まではすごく注目していただいたと思います。日本記録には少しまだ本数があるので、メディアの方々には優しく見守っていただきたい。もう少し実感の湧くような数字になってきたら、笑顔でいろいろできるかなと思いますけど、ちょっとだけ時間をいただきたいと思います」
打てば打つほど周囲が加熱し、それが秋山のプレッシャーになってきた。だが、ことごとく乗り越え、200本のヒットを重ねてきたのが今季の姿だ。
カウントダウンとともにヒットアップする周囲のなかで、最終的に何本のヒットを放つのか。
区切りの一打を達成した直後、7回にはライト前に今季201安打目を運んでいる。
「そっちのほうがホッとしたというか。区切りで終わってしまうのもよくあることなので。次の1本が出たほうが、ホッとしているところがあります」
残り12試合で、残り13本。さらにプラスアルファの1本を放てば、マット・マートン(阪神)を超えることになる。
前人未到の日本記録は、十分に現実的な未来だ。