浅村流フルスイングでチームをCSへ――手ごたえをつかんだ、右中間への2塁打【中島大輔 One~この1本をクローズアップ】
パリーグは、すでにホークスとファイターズがクライマックスシリーズ進出を決めており、残り1枠をライオンズとロッテが争っている。ライオンズにとってはもう1敗もできない状況下で浅村栄斗が救った。今回は、9月22日のオリックスバファローズ戦、3回に訪れた浅村の第2打席をクローズアップする。
2015/09/25
中村自身が語る、フルスイング
7月に中村剛也にインタビューした際、興味深い話をしていたことがある。テーマは、フルスイングについてだ。
「ストレスのかからないところでボールを捉えたい」と言う中村に、「フルスイングする必要はないんですか」と聞いたときの答えが、実に深かった。
「うーん、フルスイングって難しいんですよね。めちゃくちゃ思い切り振ったのが、フルスイングなのか。軽く、でも、自分のなかでしっかり振れたのが、フルスイングなのかもわからないんですけど。フルスイングって言っても、人から見たイメージと自分のイメージは違うと思いますし」
スイングの動作中、力をどの場面で入れていくのか。そう聞くと、中村はこう続けた。
「それも考えていないですね。勝手に力って入ると思うので。僕の場合、ホント、軽く。すべて、軽く」
この話を改めて思い出したのが、9月22日のオリックス戦で、浅村栄斗がレフトに放った3ラン本塁打と右中間への2塁打を見たときのことだ。
翌日のスポーツ紙が話題の中心として3ランを取り上げたように、試合を決定付けたのはこの一打だった。
1点リードで迎えた5回、2死から栗山巧、メヒアが出塁し、浅村に打席が回ってきた。
相手先発の山田修義がフルカウントから6球目、チェンジアップを投じる。内角低目の難しいコースに落ちていく球を、浅村が豪快なフルスイングですくい上げた。放物線を描いた打球が、満員のライオンズファンが詰めかけた左中間スタンドに飛び込む。一挙3点を奪う本塁打で、勝利をグッとたぐり寄せた。
だが、浅村にとって手応えをつかみとった一打ではなかった。
「たぶんもう1回打てと言われたら、打てないです」