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得点圏打率だけでは表れない真の勝負強さ NPB最強のクラッチ・ヒッターは?【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回はNPB最強のクラッチ・ヒッターについてだ。

2015/09/26

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特筆すべき田中賢介の数字

 もう一つの指標を出してみたい。「走者を何人かえしたか」という数字、RBI-HRだ。

 打点から本塁打数を引くという簡単な計算で導き出せる。
 本塁打数は、自分が本塁打で本塁にかえってきた回数だから、これを打点から引くことで、自分以外の走者をかえした数が出てくる。

 この数字は、得点機に数多く打席に立つ選手のほうが大きくなる。1、2番や下位打線の選手より中軸打者のほうが有利だ。
 しかし得点機に打てず、ソロ本塁打をたくさん打っているような打者の場合だと数字が低くなる。

 パリーグから見てみよう。

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 1位は打点王が確定的な中村剛也、2位は中田翔、中田は得点圏打率こそ低いが、得点機に多く打席に立っているのでそれなりに走者をかえしている。

 3位の内川は今季、4番に固定され、これまでの成績に比べると、打率が3割を切り苦戦しているように見えるが、中軸打者としての責任はしっかりと果たしている。

 注目すべきは田中賢介だ。わずか4本塁打ながら、62人の走者をかえしている。メヒア、レアード、松田など20本以上打っている打者よりも多いのだ。

 日本ハム、栗山英樹監督は、今季の初めは田中を2番に据えたが、5月から3番に固定している。本塁打は少なくても好機にめっぽう強い田中は、この起用に応えて4番の中田翔に次ぐ走者を本塁にかえしているのだ。

 対照的にソフトバンクの松田宣浩は、6番に固定されたためにこの数字が田中よりも低い。

 同じソフトバンクの好機に強い中村晃は1、2、7番で起用されているのでこの数字はさらに低くなっている。
 当然、ここまで紹介してきたランキングに名を連ねる内川、李、柳田が中軸で十分すぎる成績をあげている。ソフトバンクの打線がいかに強力であるかは、ここからも一目瞭然だ。

ヤクルト好調の要因

 次にセリーグだ。

 ヤクルトの4番・畠山が1位。山田哲人は今季の前半、1番に固定されていたために畠山とは大きな差がついた。
 阪神のゴメス、福留もよく走者をかえしていることがわかる。

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 中日の4番にはルナが80試合、平田が45試合起用されたが、二人ともこの数字はぱっとしない。好機に強い4番がいなかったことや、そもそも主に1,2番を任された選手の成績が振るわなかったことなども原因にあるだろう。

 クラッチ・ヒッターとは、長距離打者のことでも、打率が高い打者のことでもないことがこれでよくわかる。

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