落合GMが指摘、スピードアップ優先で失われる野球の面白さ――技術低下の危険性も
昨今プロ野球界では試合のスピードアップが課題に挙げられている。オリンピックの正式種目に復帰できるかどうかも、まさにこの試合時間がカギを握っているといわれている。しかし、スピードアップを優先することで、失うものもあると落合GMは警鐘を鳴らす。
2015/09/29
スピードアップ優先が勝敗に影響!?
2015年のプロ野球は、パリーグは圧倒的な強さで福岡ソフトバンクが連覇を果たしたが、セリーグは混戦となり、ようやく東京ヤクルトにマジックが点灯した。
半年間にわたるペナントレースを振り返れば、いくつもの名シーンが思い出される一方で、特にセリーグでは6球団が揃って連勝、連敗を見せるなど戦いぶりにシーズンを通じた安定感がなくなってきたように感じる。
横浜DeNAに代表されるように、2ケタの勝ち越しをしていたチームが、なぜ大型連敗によって沈んでいくのか。そのひとつの原因として、試合のスピードアップが考えられるという。
野球の試合でスピードアップが積極的に推進されるようになったのは、日米とも放送時間が読めないことで中継にスポンサーがつきにくくなったこと、また2012年ロンドン五輪の実施競技から野球が除外される際、「1試合に3時間を要し、10日間もかけてメダルがひとつという競技が五輪に相応しいのか」という声が挙がったのも大きな理由だ。
そこから、どうすれば野球が正式競技として五輪の舞台に復帰できるのかが議論され、「1試合は3時間以内」という指標が示される。
すると、日米のプロ野球が試合時間の管理に厳格になり、それ以前から観客動員増を目指して試合時間の短縮に励んでいたアマチュア球界も、独自に2時間30分あたりを目標にして、速やかな試合進行に取り組んでいる。
映画でも3時間を超える大作が少なくなったように、現代のエンターテインメントは短時間で観客を楽しませるという方向性が、世界の常識となっている状況もある。
野球がそのトレンドに乗り、きびきびとした試合を提供するのは正しい判断だ。ただし、それで大切なものが端折られてしまうと本末転倒になる――落合博満は中日で監督を務めていた時から、そう警鐘を鳴らしている。