落合GMが指摘、スピードアップ優先で失われる野球の面白さ――技術低下の危険性も
昨今プロ野球界では試合のスピードアップが課題に挙げられている。オリンピックの正式種目に復帰できるかどうかも、まさにこの試合時間がカギを握っているといわれている。しかし、スピードアップを優先することで、失うものもあると落合GMは警鐘を鳴らす。
2015/09/29
技術低下が、結果的に試合を長引かせる可能性も
そして、ゼネラル・マネージャーとしてアマチュアの試合を多く視察するようになった現在では、その思いを強くしているようだ。
「例えば、試合時間が長くなってくると、球審は投手に向かって早く投球動作に入れと促す。けれど、野球にとって間合いはとても大切な要素で、その取り方がうまいかどうかも選手の成長に関わってくる。早く投げろの一点張りでは、捕手も次の球種を考える時間がなくなり、ひいては野球を考える頭の成熟をも邪魔してしまうでしょう。アマチュアでも大味な試合、思わぬ逆転劇などがあるけれど、バッテリーが簡単に勝負に行ったことから綻ぶケースが少なくない」
また、試合時間によって内野手のボール回しを禁じることもあるが、それも言語道断だと落合は指摘する。
「ボール回しは、何となくやっているわけではない。あれで、内野手は足の運びやスローイングの感覚を確認するわけでしょう。それをやめたら変なエラーや無用なケガにもつながる。やらなくてもいいもの、という感覚が当たり前になると、内野手の技術は確実に落ちます」
同じように、ストライク・ゾーンを広めにすれば、いい打者は育たなくなる。要するに、スピードアップのために野球が本来の面白さを失ってはいけないのだ。
「スピードアップばかりに気を取られ、選手の技術が試合で磨かれなくなったらどうなるか。ここぞという場面で投手はストライクを投げられず、打者は打ってもファウルばかり。結局、それで試合時間は長くなるんじゃないのか」
今夏の都市対抗決勝は延長14回、4時間43分におよんだが、試合時間が長い、退屈だという声は一切なかった。そう、野球に限らずスポーツの持つ魅力は、時間ではなく試合内容だろう。アマチュアのレベルが落ちれば、何年後かにプロもそうなる。落合の懸念は、そういう部分も見越しているのだ。