【プロ野球評論家・与田剛の眼】第1戦の初回、上本のバスターエンドラン―和田監督の積極采配が勢いをもたらした阪神
クライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージは、セ・リーグはシーズン2位の阪神が巨人に4連勝し、パ・リーグはソフトバンクが日本ハムとの激闘を制し、それぞれ日本シリーズ進出を決めた。勝負のポイントになったのはどこだったのか。セパともにプロ野球評論家の与田剛氏に解説してもらった。
2014/10/22
菅野不在が大きく響いた巨人
巨人にとっては、菅野智之の存在の大きさをあらためて実感した戦いになってしまいました。
エース不在という事実が、選手たちに必要以上のプレッシャーを与えてしまったように思います。特に、第1戦に先発した内海哲也は、今シーズン思うような結果を残せず、このファイナルステージに賭ける思いは強かったはずです。
ただ、何とか結果を出したいという気持ちが強すぎて、いつもよりも硬さがあったように見えました。
その内海に対して、初回の阪神打線の攻撃は見応えがありました。1番の西岡剛がヒットで出塁し、2番の上本博紀にはバスターエンドラン。
ファーストゴロにはなりましたが、積極的にランナーを動かしてきました。
ここに和田豊監督の攻める姿勢が伝わってきました。
続く鳥谷敬のタイムリー二塁打で先制すると、4番のゴメスが2ラン。この間、内海が投じたのはわずか8球。気持ちの整理がつかないまま3点を取られてしまいました。
野球に「タラレバ」は禁物ですが、もし上本の打席でバスターエンドランではなく、バントでランナーを送っていれば、まだ違った結果になっていたかもしれません。
不安を抱えたままマウンドに上がった内海に、落ち着く間もなく仕掛けていった阪神ベンチのファインプレーでした。
そして第1戦でいえば、巨人は阿部慎之助の本塁打で1点を返し、なおも無死満塁のチャンスで代打にセペダを送りました。藤浪晋太郎は左打者に相性が悪く、左の代打を送るのは間違っていないと思います。
ただ、あの場面でもっとも避けたいのが併殺打。そう考えると、他に適任者はいなかったのかなという気はします。とはいえ、逃げずにインコースを突いた攻めは見事でした。
この試合を藤浪で取れたことが阪神にとっては大きかったですね。
間違いなく、チームに勢いがつきましたから。巨人にしてみれば、まだ1勝1敗のタイになっただけだったのですが、初回にわずか8球で3点を取られ、逆転のチャンスを併殺打で潰してしまうなど、想像以上にダメージの大きい1敗になってしまいました。